米国時間1月4日朝にあった,ソニー会長のハワード・ストリンガー氏の基調講演の1つの目玉は携帯ゲーム機「PSP」を端末に用いた「ロケーション・フリー」の実演だった。家の中でユーザーがテレビの前に行くのでなく,テレビがユーザーの前に来るというコンセプトで始まったロケーション・フリーは(Tech-On!の関連記事),ここにきてその端末の幅と対応メディアを広げている。

 当初は,家の中でのロケーション・フリーだった。無線LANを介してテレビ番組が手元に来た。しかし次に,インターネットを通じてホット・スポット・エリアなどで遙か彼方で放送されているテレビ番組をユーザーが手元に引き寄せられるようになった。

 端末は,まず専用の液晶テレビでスタートした。次にパソコンで無線LAN経由の映像を見るソフトウエアをリリース。そして今,PSPにロケーション・フリー機能が入った。今後,携帯型の端末で映像を見る動きが盛んになるが,ロケーション・フリーPSPはその端緒になろう。

 米Sony Electronics社でロケーション・フリーを担当する平井和彦氏(同社ホーム・プロダクト・デビジョン・ディレクター)はこう語る。「例えばニューヨークに住んでいる日本のビジネスマンがロサンゼルスに出張した場合,ニューヨーク・ローカルで放送されているヤンキースの試合はロサンゼルスでは中継されません。松井選手の活躍を見たくてもかなわないのです。しかし米国では,ホット・スポットが増えています。もうStarbucksとMcDonaldは無線LANを装備しました(Tech-On!の関連記事1同記事2)。こうした店に入ってPSPでネットにつなげば,自宅で受信した番組をそのまま見れますから,松井選手の素晴らしいプレーを見逃す恐れがないわけです」。デジタル機器においてはサービスが不可欠と言われる昨今にあって,サービスではなく,ハードウエアの力でここまでのインターネット活用ができることを証明したのがロケーション・フリーの意義といえるだろう。

 PSPの次は,携帯電話機がロケーション・フリーになる予定だ。今回のCESには間に合わなかったが,近々お目見えすると思われる。そしてソニー流に言えば「ウォークマン・テレビ」も,将来の出現は確実だ。