液晶パネルやPDPを使った薄型テレビでは,デフレ的な価格低下トレンドが顕著である。しかし,オーディオ・ビジュアル製品の出荷額として全体的にみると,実は上昇している---。CEA(Consumer Electronics Association)が開催したマスコミ向けの市場動向説明会でアナリストのSean Wargo氏は,こうした見方を示した。

 同氏の解説によると,2004年の第2四半期から2005年の第3四半期まで,米国におけるデジタル家電製品の市場規模は8.6%も拡大している。一方でこの間に,大幅な価格低下がさまざまなデジタル家電製品で起きている(液晶テレビは35%減,PDPテレビは30%減)。そうした厳しい状況下で,金額ベースの市場規模の拡大が発生しているのは,注目すべきトレンドだという。

 例えば,携帯型オーディオの市場で比較すると,かつては50米ドル程度と非常に低価格な携帯型CDプレーヤが席巻していた。しかし今では250米ドルを超えるような「iPod」がどんどん売れている。27インチ型のテレビ受像機で比較しても同じことが言える。かつては250米ドルの直視型CRTだったのが,ほぼ同じ画面の大きさの液晶テレビは799米ドルほどもしている。パソコンもデスクトップ・タイプは500米ドルだったのが,売れ筋がノート・パソコンに切り替わり,その単価は750米ドルまで上がっている(いずれもCEA調べ)。

 電気製品というと,恒常的な価格低下が当たり前の分野だが,実は技術革新とヒットの打ち方で,そのトレンドを逆転させることができるというのもデジタル家電製品の面白さだ。特にCRTテレビと液晶テレビの対比では,デジタル化がプラスに働いているのである。

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