2005年下半期を見つめ直す意味で,Tech-On!では今,テーマサイトごとに「下半期トップ10」をお送りしています。これは「モバイル」に掲載した7月~12月の記事の中から主な動きなどを抽出して半年を振り返り,2006年に向けての何かのヒントになればと企画した記事です。(Tech-On!編集部) |
2005年下半期の携帯電話に関連する動向を振り返るに当たり,10個のキーワードを選んでみた。具体的には
- ワンセグ
- 薄型の携帯電話機
- 携帯電話事業者の新規参入
- モバイルWiMAXの台頭
- リコンフィギュラブルRF
- 1チップ・ケータイ
- 決済機能を内蔵する携帯電話機
- PTT(push-to-talk)
- 携帯電話機メーカーの動向
- 燃料電池を内蔵した携帯電話機
である。このほか,読者の方のアクセス数に基づいた「人気ニュース・トップ10」も文末で紹介する。まずは10個のキーワードについて,それぞれ注目した理由と関連ニュースを見ていこう。
ワンセグ
2005年9月27日,日本放送協会(NHK)と在京民放キー局5社などが,携帯機器に向けた1セグメントの地上デジタル放送の本放送を2006年4月1日に開始すると発表した。携帯電話機で見るテレビの本格化を見据え,専用チューナやアンテナなど関連する部品の発表が相次いだ。
海外でもテレビ受信機能を備える携帯電話機の実用化が近づく。2006年6月に開幕するサッカーのワールドカップを契機にしたい考えだ。
<ワンセグの関連記事>
- 地デジ携帯,2006年4月1日開始---ドコモとauが商用向け端末披露
- 【CEATEC】 村田の1セグ放送向けチューナブル・アンテナ,ケータイ内蔵可能
- 【CEATEC】三洋電機が1セグ地デジ・チューナ・モジュールを展示,消費電力は110mW
- 【Inter BEE】テクトロニクス,1セグ放送に対応したストリーム解析装置を展示
- ソニー,1セグ/地上アナログ/FM放送対応の小型チューナを開発
- 12セグ/1セグ放送を切り替えて受信エリアを拡大,車載向け地上デジタル受信技術を日立らが発表
- Nokiaが世界初のDVB-Hケータイを発売へ,UPnP対応機種も
- LG社,デジタル・テレビ受信機能付きのW-CDMA端末を出展
- 【IFA】「いざワールドカップ」,ベルリン舞台のテレビ・ケータイの試験を披露
- 【IFA】Samsung社がDVB-H用ICを出展,「チューナもベースバンドもお任せ」
- 韓国Samsung社,テレビ・ケータイ仕様「DVB-H」のチップセットを発表
薄型の携帯電話機
NECが2005年9月に発表した機種は,厚さ11.9mmと「折り畳み型としては世界最薄」(同社)のカメラ付き携帯電話機「e949」。GSM/GPRS方式に対応する海外市場向けの機種だ。国内でも20mmを切る携帯電話機が登場するなど,大きな流れになっており,部品メーカーは構成部品の低背化を進めている。10月開催の「CEATEC JAPAN 2005」では,こうした部品が目白押しだった。
<薄型ケータイの関連記事>- NECはどうやって超薄型折り畳みケータイを作ったか
- 【CEATEC】「モバHO!」対応や厚さ16.7mmの薄型機など,NTTドコモがFOMA最新4機種を発表
- 【CEATEC】オムロン,2割以上薄型化した厚さ2.5mmのジョグダイヤル
- 【CEATEC】一気に半減,オムロンが高さ0.5mmのFPCコネクタを展示
- 【CEATEC】「iPod nano搭載品より薄い」,超薄型の液晶パネルが続々登場
携帯電話事業者の新規参入
ソフトバンク・グループのBBモバイル,イー・アクセスの子会社であるイー・モバイル,およびアイピーモバイルの3社が参入を果たした。2005年11月10日には認定書が3社に交付された。携帯電話事業に対し,新規事業者が参入するのは実質的には12年ぶりのことである。2006年以降,3社の動向には目が離せない。
<新規参入の関連記事>
- ソフトバンクなど3社が携帯電話用周波数を確保,新規事業者では12年ぶり
- ソフトバンク流ケータイ戦略,ADSLと違う3つのポイント
- HSDPA,WiMAX,Wi-Fi間でIP電話やビデオ伝送,Nortel社などが実証実験
- BBモバイルが1.7GHz帯の3G用免許申請,「2007年中に正式サービス開始」
- Ericsson社とソフトバンク,3Gと無線LAN間でビデオ伝送のハンドオーバーを実証
- 【ワイヤレスジャパン】「メインの端末かサブ端末か」,新規参入狙うソフトバンクとイー・アクセスの意見割れる
- 【ワイヤレスジャパン】ボーダフォン津田会長,事業者参入ラッシュにクギ
モバイルWiMAXの台頭
この半年の間に,モバイルWiMAXが著しく台頭してきた。モバイルWiMAXは,IEEE802.16eとして規格化されるものであり,従来は米Intel Corp.をはじめとする米国の企業が推進していた。しかし,2005年後半にはKDDIが実証試験を実施したほか,韓国がIEEE802.16eに準拠した「WiBro」の導入に積極的になっている。2006年6月には,WiBroの導入が始まるという。
<モバイルWiMAXの関連記事>
- 韓国SKがモバイル版WiMAX「WiBro」用基地局を開発,ソフトウエア無線を導入
- ウィルコムが次世代PHSの実験開始へ,無線仕様はモバイルWiMAXと酷似
- MotorolaとIntel,モバイル版WiMAXを共同推進へ
- Samsung社が「WiBro」のハンドオーバー実験,最高120km/hでも動作
- QUALCOMM社がFlarion社を買収,IEEE802.16eでも採用のOFDMA技術を獲得
リコンフィギュラブルRF
携帯電話機が複数の無線技術を搭載するようになったことから,リコンフィギュラブルRFに関心が集まっている。送受信するバンドの中心周波数や帯域幅を動的に切り替えられるRFトランシーバIC であり,2005年11月に米BitWave Semiconductor,Inc.が開発したことを発表した。2006年第1四半期から評価キットの出荷を開始するという。「ソフトウエアによる制御でRFチップを再構成できる。いわば『Softranceiver』(ソフト・トランシーバ)だ」(同社)。
<リコンフィギュラブルRFの関連記事>
1チップ・ケータイ
携帯電話機の基本機能の集積を進めた1チップ・ケータイの進歩も急速だった。2004年7月にNTTドコモの技術投資を受けたルネサス テクノロジと米Texas Instruments Inc.が,それぞれアプリケーション処理用のマイクロプロセサとベースバンド処理回路を統合したチップのサンプル出荷を始めた。ISSCC 2006では,ルネサスの開発品の一端が発表されることになっている。
<1チップ・ケータイの関連記事>
- NTTドコモと共同開発する1チップ・ケータイ,ルネサスがサンプル出荷を開始
- ルネサスがSoCの統合開発環境を構築,NTTドコモと共同開発した1チップLSIから適用
- NTTドコモが熱望する携帯電話機向けLSI,TI社がルネサスに続きサンプル出荷
- 【ISSCCプレビュー】ルネサスとNTTドコモの1チップ・ケータイ,待ち受け時の消費電流は7μA
- 米Silicon Laboratories社が1チップ・ケータイを発表,集積した回路は業界最多をうたう
決済機能を内蔵する携帯電話機
2004年に導入が始まった,決済機能を内蔵する携帯電話機。その普及が本格化する兆しが見え始めた。NTTドコモに続き,KDDIとボーダフォンも決済機能を備えた「おサイフケータイ」を製品化,3社が出そろった。2006年1月末には「モバイルSuica」が始まることも正式に発表された。決済機能の基盤となっている「FeliCa」対応ICの出荷個数は,2005年10月時点で1億個,携帯電話機向けは1000万個に達した。
<ケータイで決済の関連記事>
- まずは2機種,KDDIもFeliCa搭載端末を今秋発売
- ボーダフォン,FeliCa端末を11月上旬に発売
- NTTドコモ,タワーレコード株42%を取得,「おサイフケータイ」などで提携
- モバイルSuica」は1月28日午前4時から,NTTドコモの7製品とKDDIの2製品が対応
- 「今度は駅の外へ」,JR東日本とNTTドコモ,NTTデータがSuica電子マネーを共同推進
- 「FeliCa」対応ICの出荷個数が1億個に到達,携帯電話機向けは1000万個
PTT(push-to-talk)
国内における新たなサービスとして,PTT(push-to-talk)が相次いで始まった。いわゆるトランシーバのように,通話者が交互に話すスタイルの音声サービスである。KDDIは,PTTのトランシーバ型の通話だけでなく,チャット型のテキスト送受信と写真の送受信を組み合わせた新しいコミュニケーション・サービスと位置付けている。
<PTTの関連記事>
- ドコモがpush-to-talk対応の「902i」発表
- KDDIもトランシーバ型通話サービス開始,ワンセグ対応機も正式発表
- 米Ecrio,「FOMA 902i」向けpush-to-talk用ソフトウエアを供給
携帯電話機メーカーの動向
端末メーカーの激しい動きにも目が離せない半年だった。韓国Pantech&Curitel Communications, Incが,KDDIを通じて国内市場への参入を果たした。カメラを省くなどして100gを切った軽量端末である。
海外展開を目論む松下電器グループのパナソニック モバイルコミュニケーションズは,価格競争が激しい現行世代(GSM/GPRS)だけの機能を備える端末を切り捨てる。今後は,第3世代方式に対応する機種を中心に据え,高級機メーカーとして世界市場で勝負する。海外メーカーでは,米Motorola Inc.の躍進が目立った。2004年に発売した薄型の機種「RAZR」が好調で,市場シェアを大きく上げた。
<端末メーカーの動きの関連記事>
- 松下が海外ケータイ事業に大ナタ,LinuxとUniPhierベースの3G端末に集中
- 携帯電話機の国内出荷シェア,第3四半期はシャープが首位---IDCの調査より
- KDDIの韓国P&C製ケータイ,第一弾は100gを切る小型軽量機
- KDDIが韓国メーカーから端末を調達,2005年中に発売開始
- 寡占進む携帯電話機の世界市場,第2四半期の販売台数の約1/2がNokiaとMotorola
- Motorola社は携帯電話機が絶好調,市場シェアを18%へ拡大
- Nokia社,携帯電話機の需要増で売り上げ好調も価格下落で利益率が低下
燃料電池を内蔵した携帯電話機
最後に挙げたいのが,燃料電池ケータイである。2004年は,携帯電話機に外付けする燃料電池の試作機が登場したが,2005年は本命ともいえる「内蔵型」の試作機が公開された。
<燃料電池ケータイの関連記事>
- 【CEATECプレビュー】KDDI,燃料電池内蔵ケータイの試作機を出展
- 【CEATEC】日立製作所,ペン型カートリッジで燃料を充填可能に
- 【CEATEC】NTTドコモ,燃料電池内蔵の携帯電話機のモックアップを参考展示
- NTTドコモのケータイ向け燃料電池,富士通フォーラムで触ってきました
- NTTドコモがケータイ向け燃料電池を改良,クロスオーバーを半減して通話時間を3倍に
以上,10のキーワードでこの半年の動きを整理してみた。これとは別に,読者の皆さまからのアクセス数で上位10件の記事を抽出してみると,以下の通りになった。薄型の携帯電話機に関するニュースが3件含まれており,関心の高さがうかがえる結果になった。
- 【続報】NECはどうやって超薄型折り畳みケータイを作ったか
- フルブラウザ付きの「ウォークマン携帯」,今秋にも発売
- 瞬時に撮った4枚で手ブレを補正,新プロセサ搭載した「N902i」
- 地デジ携帯,2006年4月1日開始---ドコモとauが商用向け端末披露
- 「高機能3G端末でも最薄20mm」,東芝が6mm減の秘密を語る
- 折り畳み型でわずか11.9mm,NECが薄型ケータイを発表
- Samsung社がHDD内蔵ケータイ第2弾,容量は3Gバイトに倍増
- PDCからW-CDMAそしてWiMAXまで,「リコンフィギュラブルRF」がいよいよ登場
- 「モバイルSuica」は1月28日午前4時から,NTTドコモの7製品とKDDIの2製品が対応
- ウィルコム,PHS/無線LAN内蔵のPDAを12月発売