次世代光ディスクが採用する著作権保護方式「AACS」で,コンテンツ事業者や機器メーカーが遵守するCompliance Rules(運用規定)がついに固まった。最大の争点だった「アナログ端子の解像度制限」(ブログ参照)については,日本など特定の地域では2010年まで制限を行わないことで決着をみた。

 ただし,日本の機器メーカーにとって厳しい条項も盛り込まれた。2011年以降は,AACSに対応する機器は,アナログ端子にHDTV映像を出力できなくなる。さらに2014年には,アナログ端子への映像出力そのものが禁止される。

*ここでのアナログ端子とは,D端子,コンポジット端子,S端子などを指す。

 このCompliance Rulesは,DVD ForumやBDA(Blu-ray Disc Association)に所属する各企業による2週間の評価期間を経て,2006年1月には正式に確定する見通し。その直後からAACSのライセンス供与が始まる予定だ。年末から年始にかけての2週間の間に,機器メーカーはこのCompliance Rulesを認めるか,あるいは異議を唱えるか,判断を迫られることになる。

大幅に遅れたAACSのライセンス発効

 本来であれば,2005年夏頃にはComliance Rulesが確定し,AACSのライセンス供与が始まる予定だった。しかし,実際には予定を大幅に超過する結果となった。この結果,東芝は2005年末に予定していたHD DVDプレーヤの発売を延期せざるを得なかった(Tech-On!関連記事)。
 
 ここまでCompliance Rulesをめぐる議論が長引いたのは,冒頭に挙げたアナログ出力制限機能の導入をめぐって議論が紛糾したためである。有効なコピー防止技術を持たないD端子によるHDTV映像の出力に,最も厳しい見方を示したのが米Warner Bros. Studios社である。同社が主張したのは,ディスクに書き込んだ解像度制限ビット「Image_Constraint_Token(ICT)」の値に応じて,D端子をはじめとするアナログ端子に出力する映像の解像度を制限できる機能(以下,ICT機能)を機器に義務付けること。このWarner社の主張に対して,松下電器産業やソニーは強行に反対した。背景には,デジタル端子を持たなハイビジョン・テレビが広く普及してしまった日本市場の特殊性がある。ICT機能を義務づけると,今まで販売してきたハイビジョン・テレビを利用しても,次世代光ディスクによるコンテンツをHDTV表示できなくなってしまう。

* 「Image_Constraint_Token(ICT)」は,元々はDTCP(digital transmission content protection)で規定されたフラグである。ICTの値を0に設定したコンテンツは,D端子などのアナログ端子にHDTV映像を出力することが禁止され,SDTV映像にダウン・コンバートした信号のみ出力できる。ICTの値を0とするか1とするかは,原則としてはコンテンツ事業者の自由裁量に委ねられる。

 そして12月上旬,双方が一歩ずつ妥協することで,ようやくこの問題に決着がついた。

アナログ停波に続く新たな「2011年問題」が浮上