米MIT(Massachusetts Institute of Technology)のMedia Labが開発中の「$100 Laptop」(100米ドルのノート・パソコン)(Tech-On!関連記事その1その2その3)について,Media LabでConsumer Electronics Laboratory担当のDirectorを務めるMichael Bove氏に聞いた。このプロジェクトは「貧しい国の子供たちを対象としたもの」と認識されることがあるが,同氏はそうではないという。プロジェクトは,先進国か後進国であるかによらず全世界の学生に魅力的な端末を配布することを目的としている。「我々が開発した技術を第三者にライセンスして製品化してもらうことも検討している」(同氏)という。ライセンス料による利益は,$100 Laptopを使った非営利プロジェクトに役立てる構想もある。

 $100 Laptopに採用する技術はまだ確定していないため,現時点ではMedia Labは技術の詳細を公開できないという。特にメイン・ボードに搭載する部品が焦点となっているようだ。マイクロプロセサについては「現在の試作機が内蔵するものはAMD社のPersonal Internet Communicator(関連記事その4)と似ているが,量産品に搭載するマイクロプロセサはこれと異なる可能性がある」(Bove氏)。OSは米Red Hat, Inc.が開発する専用のLinuxである。OSやソフトウエアはリモートで管理やアップデートを行うので「家電向けのLinuxに近い発想だ」(Bove氏)とする。

消費電力の削減にはディスプレイとメッシュ・ネットワークが重要

 $100 Laptopは,ユーザーが側面に備える発電用クランクを回すことで充電できるという特徴を備える。ただし発電量は多くないので,消費電力をできるだけ削減することがポイントになる。Bove氏はユーザーが学校などでいったん充電した後,24時間動作することを目標に置いている。このためには,消費電力をPDA並みに削減することが必要になるという。

 この目標を実現するために,Media Labはディスプレイにかなりの技術的労力を割いているという。「電子ペーパーをいずれ採用できればいいが,現在は動画の表示には耐えられない上,部品コストが高い。このため現在は,携帯型DVDプレーヤが備えるものと同程度の大きさの液晶ディスプレイの採用を予定している。その場合,バックライトの効率を引き上げて消費電力を抑える必要がある」(Bove氏)。このためにMedia Labは,半透過型液晶パネルの技術動向に注目しているという。さらに,高画像度のコンテンツの場合,モノクロ表示することを検討している。いずれにしても,コストを抑えるため,既存の製造ラインを変更する必要がない技術の採用を予定しているという。

 $100 LaptopはIEEE802.11に基づいたメッシュ・ネットワーク機能を備える。Bove氏によると現在このメッシュ・ネットワーク機能は「MADWIFI(Multiband Atheros Driver for WiFi)」とMITが開発した「Roofnet」と呼ぶ技術を採用している。消費電力を減らすために,メッシュ・ネットワーク機能の改良も図っているという。「隣の機器だけと通信するといった工夫を検討している」(Bove氏)。