ユビキタスID基盤システムの構想。現状のインターネットの上に,仮想的な「オーバレイ・ネットワーク」を構築する。
ユビキタスID基盤システムの構想。現状のインターネットの上に,仮想的な「オーバレイ・ネットワーク」を構築する。
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 東京大学教授の坂村健氏らが提唱するユビキタスID(uID)のコード体系「ucode」を推進する非営利組織ユビキタスIDセンターは,ucodeの運用に必要となる広域分散型の「ユビキタスID基盤システム」の構築を開始した。世界全体で一意の「ユビキタスID」を管理するためのインフラストラクチャとなるネットワークを,現状のインターネットの上に仮想的な「オーバレイ・ネットワーク」を形成することで構築する。

世界規模のユビキタスID管理を実現する

 ユビキタスIDの構想では,管理したい物品すべてについて,それぞれ128ビット長のコード「ucode」を割り当て,無線ICタグ(RFID)や2次元バーコードなどに格納する。このucodeを読み取り「ucode解決サーバ」に問い合わせ,格納した情報を取り出す仕組みを構築する。ucodeは全世界で一意となるよう割り振る。世界中のどこからでも問い合わせることができる必要がある。

 今回構築を開始したユビキタスID基盤は「世界中の数億台のサーバ・ノードが協調動作することを前提」(ユビキタスIDセンター)とする。既に,韓国インターネット振興院(National Internet Development Agency of Korea,NIDA)との間で,ユビキタスID基盤システムの協調動作に関する技術実験を開始している。今後は「中国,台湾,シンガポール,インド,ベトナム,オーストラリアなどと協調していく」(坂村健教授)。

「現状のインターネットはユビキタス基盤として不十分」

 世界規模のネットワークとしては,既にインターネットがある。だが,坂村氏と共にユビキタスIDを推進する越塚登氏(東京大学助教授,YRPユビキタスネットワークキング研究所副所長)は「インターネット,つまりIPネットワークはユビキタスという目的には足りない部分もある」と話す。「IPネットワークではエンド・ツー・エンドの通信路だけを提供するが,世界規模の分散ネットワークでは通信路の途中でキャッシュやエラー訂正などの機能を持たせた方が良い場合がある。このような新たなネットワーク技術を,既存のインターネット環境の上で仮想的に実現する技術として,オーバレイ・ネットワーク技術に注目している」。

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