今後5年の放送業界を左右する要素
今後5年の放送業界を左右する要素
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2011年度でもアナログテレビはかなり残る
2011年度でもアナログテレビはかなり残る
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ブロードバンド加入者の予測
ブロードバンド加入者の予測
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 野村総合研究所は12月7日,2010年までの放送市場やブロードバンド市場などに関する市場規模予測を発表した。

 まず,放送市場に関しては「向こう5年の放送業界を左右する5つの要素」として,1.移動体端末向け放送,2.ビデオ・オン・デマンド(VOD)サービス,3.衛星放送,4.地上デジタル放送,5.NHK問題,を挙げた。

 移動体端末向け放送では,2006年4月に始まる1セグが市場を牽引する。2006年度の市場規模は5億円だが,2010年度には約500億円に拡大すると予測する。ここでの市場規模には端末は含まれず,放送によって生じる付加価値,つまり広告や有料サービスなどを指す。
 VODでは,最近になって企業の参入が相次いでいるが,「いずれもシステム投資やコンテンツ調達費がかさみ,収益は厳しい状況にある。GyaOなど広告収入をベースにしたビジネスモデルに期待がかかる」(コンサルティング事業本部情報・通信コンサルティング一部の葛島知佳副主任コンサルタント)としている。VODの市場規模は,2005年度の90億円に対し,2010年度は620億円と見ている。

 地上デジタル放送では,「2005年9月末までに受信機が620万台出荷され,普及は順調に進んでいる」(同)としている。2011年度末にはそれが5876万台になると予測する。
 ところが,現在国内で稼動しているテレビの台数は約1億台もある。このため,アナログ放送が終了する2011年7月には,設置されているテレビのうち46%が,世帯では全体の19%が地上デジタル放送を受信できなくなる,と見込む。「本当に2011年7月にアナログ放送の停波を迎えられるのか,疑問だ」(同)。

 
 一方,ブロードバンド市場に関しては,「2006年度以降にはADSL加入者がこれまでの増加から減少に転じ,市場牽引役がFTTHに交代する」(コンサルティング事業本部情報・通信コンサルティングニ部の桑津浩太郎上席コンサルタント)のが大きなトピックだとしている。ADSL,ケーブルテレビ,FTTH利用世帯の合計数は,2005年度の2154万世帯に対し,2010年度には2900万世帯に拡大する。そのうち,ADSLは1114万世帯,ケーブルテレビは299万世帯で,最も多いFTTHは1488万世帯と予測している。ブロードバンド市場の金額ベースの規模は,2005年度の9516億円に対し,2010年度は1兆2462億円に拡大する。

 ただし桑津氏は,ADSLからFTTHへの移行がこの予測よりも停滞する可能性もある,と指摘する。「過去に起きたダイヤルアップからADSLへの移行と比較すると,利用者にとっての利便性向上は限定的なためだ。実際,インターネット利用者の用途はWWWサイトの閲覧やメールが中心。ADSL利用者の30~40%は,現在のサービスに不満を抱いていない」(同)。

 この状況を打開するカギとなるのが,インターネット経由で提供される映像コンテンツ。「HDTVならデータが圧縮されていても最低4Mビット/秒の伝送速度が必要で,こうしたコンテンツに対するニーズが増えれば,FTTHへの移行も進む」(同)としている。