パソコン向けDRAMが値下がりする一方で,携帯電話機向けDRAMの需要が急増している。これはGSM方式の端末でDRAMの採用が進んでいるからだ。GSM方式の出荷台数は,2005年に5億台と携帯電話機の出荷台数では圧倒的に多い。

 携帯電話機に搭載するRAMは,SRAMから擬似SRAM,そしてDRAMへと,大容量化に伴って単価の安いメモリにシフトしてきた。それでも,これまでDRAMの搭載は,日本市場向け機種とCDMA方式の機種が中心だった。GSM方式はローエンドの機種が多く,擬似SRAMで十分だった。モノクロの最もローエンドの機種では今でもSRAMを搭載しているくらいだ。ところが,GSM方式でも高機能化に伴いDRAMの採用が増え始めた。潜在市場が2~3倍に増えたことになる。

携帯電話機向けDRAMはビット換算で年率100%増

 GSM方式が採用した以外に,フラッシュ・メモリがNOR型から単価の安いNAND型に移行することもDRAM需要を拡大する原動力の1つになる。NOR型と異なり,ランダムアクセスできないNAND型フラッシュ・メモリは,格納しているプログラムを一度RAMに移す必要が生じるため,必要なRAM容量が増えるからだ。コストを抑えるために,より安いDRAMを採用することになる。

 NAND型フラッシュ・メモリの採用が広がり,搭載するDRAMの容量は拡大の一途だ。携帯電話機メーカーは2006年には512Mビット,2007年には1Gビットを要求するだろう(図)。その結果,世界全体の携帯電話機向けDRAM需要は,ビット換算で2006年と2007年に年率100%増が見込める。

図●携帯電話機に搭載するフラッシュ・メモリとRAMの容量の関係

携帯電話機向けDRAMは価格が20%減と安定的に推移

 携帯電話機向けDRAMの価格は,パソコンに搭載されるDRAMと比べて容量当たり約1.5倍,高価だ。しかも,価格が乱高下するパソコン用DRAMに比べて,価格下落幅は年率20~25%減と大きいものの安定しており,事業の見通しは立てやすい。これはMCP(Multi Chip Package)に組み込まれるため,カスタム性が強いことに加え,価格のかく乱要因であるスポット市場が存在しないからだ。また,今のところ韓国Samsung Electronics Co.,Ltd.とエルピーダメモリの2社のシェアが高く,この点でも価格が短期間で大きく変動することはない。高価な携帯電話機向けDRAMを2社が山分けしている。

 しかし,他のDRAMメーカーも携帯電話機向けDRAMでシェア獲得を狙っている。擬似SRAMでトップ・メーカーの米Micron Technology,Inc.が,米Intel Corp.とNAND型フラッシュ・メモリ事業で提携した(Tech-On!関連記事)。この提携で携帯電話機向けメモリをすべて揃えることが可能になった。DRAMとNAND型フラッシュ・メモリをMCPにして提供できる。今後は,Samsung社と日本勢,米国勢の三つ巴になり,競争が激しくなる。