2005年末から2006年にかけて新しいゲーム機が次々と市場に投入される。その皮切りが,2005年12月10日発売予定の米Microsoft Corp.の「Xbox 360」だ。

 ゲーム機は発売時に需要が大きく膨らむ。そのため部品不足で供給が追いつかないことが過去にもあった。記憶に新しいところでは,ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCEI)の「プレイステーションポータブル(PSP)」がプロセサ不足で供給不足になった。Xbox 360は200万台を生産して,発売時の需要に備える計画だ。機構がパソコンに近いXbox 360では部品不足は起きにくい。パソコンと異なるのはPowerPC系のプロセサとメモリになる。特にメモリは,1台当たり512MバイトのGDDR3型メモリが搭載されるため,発売前の1~2カ月で1600万個もの512MビットDRAMが必要だ。これをドイツInfineon Technologies AG,韓国Samsung Electronics Co.,Ltd.,韓国Hynix Semiconductor Inc.の3社で供給する。

 発売前のゲーム機向け需要は,DRAMメーカーにとって重要だが,需要が一時的に急増するため生産能力が不足するという側面もある。また,上記のDRAMメーカー3社のうち韓国メーカー2社は,DRAM生産ラインを使ってNAND型フラッシュ・メモリを増産しているため,生産能力のやりくりに苦労した。NAND型フラッシュ・メモリの増産でDRAMの生産量が増やせない上にゲーム機向けの特需が加わり,毎年パソコン向けでDRAM需要が拡大する第4四半期にパソコン向けDRAMはより厳しい供給不足になると見られた。しかし実際,2005年第4四半期は,パソコンの不振でパソコン向けDRAMは値下がりした。DRAMメーカーにとって,ゲーム機向けが救世主になったと同時に,Microsoft社にとってはDRAMの調達問題をXbox 360の供給不足の理由にできなくなった格好だ。

 2006年春にはSCEIが新機種「PS3」の発売を予定している。搭載されるメモリは256MバイトXDRメモリ,さらにNAND型フラッシュ・メモリも搭載するため,DRAMとNAND型フラッシュ・メモリに特需が発生する。PS3向けメモリーは東芝,Samsung社,エルピーダメモリの3社が供給する。例年第1四半期は半導体需要が落ち込む時期だが,PS3のおかげで3社は生産ラインの稼働を落とさずに済みそうだ。

図●世界のゲーム機の生産台数の推移(2001年~2004年実績,2005年~2006年予測)