富士重工業代表取締役社長の竹中恭二氏。
富士重工業代表取締役社長の竹中恭二氏。
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 富士重工業は,2005年上半期(2005年4~9月)の連結決算を発表した。売上高は6671億円,営業利益は174億円を計上。前年同期と比べて,売上高は3.4%(237億円)減ったが,営業利益は12.3%(19億円)増えた。販売台数の減少やプロダクトミックスといった減益要因を,合理化によるコスト削減などで挽回した形。通期では増収になるものの,営業利益は対前年同期で減る見込み。

 減収分237億円のうち,そのほとんどは北米の生産子会社(富士重工業100%出資)であるSubaru of Indiana Automotive(SIA)社によるもの。SIA社では,いすゞ自動車の車両を受託生産していたが,この契約が2004年7月に解消。SIA社単体の減収分は223億円であり,これを穴埋めすることができなかった。

 販売もやや不調。全体の販売台数は26万4000台で,前年同期の27万5000台を1万1000台下回った。国内,海外共に販売台数が減っている。国内では「フォレスター」や「インプレッサ」の販売台数が前年同期を上回ったものの,「レガシィ」や「R2」は前年同期よりも落とした。「2006年に軽自動車市場ではボリュームゾーンに相当するトール・ワゴンの新型車で巻き返しを図る」(同社代表取締役社長の竹中恭二氏)。海外では豪州が好調。通期に関しては,北米市場向けの新型車「B9 Tribeca」の効果も期待できるとしている。

 営業利益の増減分析は,増益要因として「試験研究費」の減少が62億円,「原価低減」が59億円,「諸経費等」の減少が51億円,「為替レート差」が2億円。減益要因として「売上構成差等」が155億円としている。試験研究費に関しては,前年同期に計上されていた「B9 Tribeca」の開発費が今期は計上されていないことが大きいという。IT活用などによる試験研究費の削減も進めている。

 2005年度通期では,売上高1兆4800億円(前年度は1兆4465億円),営業利益390億円(同420億円)を見込んでいる。営業利益は,2005年10月5日に発表した360億円から上方修正した。後述する人員削減を実施することで,コスト構造が改善されるためとしている。

 決算発表に伴い,同社は人員削減案も明らかにした。(1)富士重工業グループ全体で700人(全体の約5%に相当)を上限とし,希望退職者を募集する(2)現在関係会社に出向している約1100人の中から300人ほどを出向先企業に転籍させる---というもの。(1)に関しては,2006年3月末時点で45歳以上の管理者・一般従業員が対象。希望退職者には割増退職金の支給と,再就職支援会社を通じた転職支援を行う。「富士重工業の関係会社,および競合他社には転職しないというのが希望退職の条件」(竹中氏)。割増退職金に関しては,通期で約80億円の特別損失として計上する予定。(2)に関しては,出向者の中でも50歳以上または長期出向者が対象。「関係会社との賃金格差を考慮し,一定額の奨励金を支給する」(同社)。

 トヨタ自動車との資本提携に関しては,現時点で具体的に発表できる内容は一切ないという。「提携の効果が業績に現れ始めるのは,1~2年後くらいと個人的には見ている」(竹中氏)。米General Motors社との資本提携解消に伴い,GMグループであるスウェーデンSaab社と共同で進めてきたクロスオーバー車の開発は中止となったため,この共同開発に投入していたリソースをトヨタ自動車との協業に回す。なお,この共同開発の中止による損失も通期で約56億円の特別損失として計上する予定。

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