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【等身大のチャイニーズワーカーを知る】第1回---だましたのではありません

海外進出コンサルタント 遠藤健治氏
2005/11/07 19:07
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 海を挟んで隣同士にあり,国民の髪や肌の色も似ている日本と中国。外見だけでは日本人と中国人とを見分けることは簡単にはできないほどです。しかし,そうした外見とは裏腹に,一般の日本人と中国人の内面は,全くと言ってよいほど異なっています。

 今,そのことを痛感する日本人が増えています。日本人が中国人とビジネス上の取引をしたり,日本メーカーが低い人件費や市場性を求めて中国に進出したりする機会が日増しに増加しているからです。中国現地工場を建設する日本メーカーは,大手企業だけでなく,中小企業にも広がっています。

 ところが,こうした中,それまで信用していた中国人に「だまされた」とか,「こんなはずではなかった」と嘆く日本人の話をたくさん耳にするのです。

 どうして,そうなるのでしょうか。ある日本メーカーの社長が,私にこんなことを言いました。

「中国に進出するまで,私は中国がとても好きでした。進出を後押ししてくれた中国人のコンサルタントや協力会社の中国人は,とても誠実な対応をしてくれて,みんな信用のおける人たちだと私は感じました。ところが,実際に中国への進出を決断し,現地で工場を建設して作業員を募集し始めるやいなや,中国に対する私のそうした印象はガラリと変わりました。現地で募集した中国人の作業員があまりにも自分勝手で利己的だったからです。みんなが自由奔放に振る舞い,会社の規則や私たちの指示など全く守ろうとしません。はっきり言って,だまされたと思いました」。

エリートだけしか知らなかった


 途方に暮れそうになったこの社長ですが,既に工場を建設し,生産ラインも整えてしまっています。大きな費用を投じたため,そう簡単に日本に戻るわけにはいきません。どうしたらよいかと懸命に考えました。そして,次のようなことに気付きます。

「よく考えると,私が中国に進出するまでに付き合ってきた中国人は,みんな学歴が高く,しかも外国人である日本人とどのように接したらよいかについて,特別に訓練を受けてきた人たちばかり。一部のエリート階級に属する人たちだったのです。ところが,現地工場で採用した中国人は,その多くが地方から出稼ぎに来た人たち。ほとんどの人が,最近まで小さな村の閉ざされた社会で,決まった人間とだけしかつき合わない環境で生活してきました。外国人と接した経験も,しっかりした組織の会社で勤務したこともないのです。だから,会社の上下関係をはじめ,決定した規則やルールを守ることを彼らに要求しても,彼らはどうしてよいか分からないのです」。

 こうして,この社長が達した結論は,中国人の作業員に対して「上司の言うことは聞かなければいけない」「規則を守らなければ良い製品は造れない」「誰かがルールを破ればみんなが迷惑を被る」などなど,実に基本的なことから教育するということでした。

 かつて私がある日系メーカーの中国現地工場に製造部門の部長として赴任した時にも,この社長と同じようなことを経験しました。製品の品質を確保するために,中国人の作業員に厳しく改善の指示を出したのに,翌日にはまた元のひどい作業に戻ってしまうのです。

 私が改善すべき現場を見つけては,通訳を呼んで担当する中国人の作業員を叱責するのですが,彼らは言い訳をするばかりで,製品の品質は一向に高まりません。最後には,始末書を書かせたり,罰金を科したりするのですが,厳しく対処しようとすればするほど彼らは問題を隠す行動に走るばかりで,問題をさらに悪化させてしまうのです。

 そうした毎日を繰り返すうちに,私はあることに気付きました。それは,私たち日本人と中国人の作業員とでは,この工場に入社するまでに育ってきた環境があまりにも違うということです。しかも,同じ会社で一緒に仕事をしている“現在”においても,中国人の作業員は私たち日本人とは全く異なる社会環境の中を生きています。

 日本の会社では,上司と社員とを比べても育った環境や生活環境にそれほど大きな差はないでしょう。しかし,中国現地工場では,中国に駐在する課長以上の日本人と作業員との間にはそれらに大きな差があるのです。

 先の社長や私のこうした経験から分かるように,日本人が中国現地工場で中国人の作業員と良好なコミュニケーションを取るためには,中国人の作業員の実状を知ることがとても役に立ちます。彼らの考え方や文化,習慣,生活環境などを知れば,日本人から見て「なぜ,そうした行動をとるのか」と疑問にしか思えないことでも,理解するヒントが見えてくるはずです。(次回に続く

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