現在の拠点におけるオフィスの例。「ノート・パソコンさえ持ち込めば,すぐに仕事ができる環境を整備している」(BIC)
現在の拠点におけるオフィスの例。「ノート・パソコンさえ持ち込めば,すぐに仕事ができる環境を整備している」(BIC)
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左からBIC Executive Directorの星野岳穂氏,Project Coordinatorの黒岩ふさ子氏
左からBIC Executive Directorの星野岳穂氏,Project Coordinatorの黒岩ふさ子氏
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「シリコンバレーでの日本人の起業を全面的にサポートする」(ジェトロ Business Innovation Center,Executive Directorの星野岳穂氏)。

 米カリフォルニア州サンノゼ市にベンチャー企業の支援拠点を構える日本貿易振興機構(ジェトロ)は,2005年11月から同拠点の設備を拡大することを明らかにした。ジェトロが運営する日本人向けの起業支援拠点「BIC(U.S.−Japan Business Innovation Center)」の施設を拡充し,より多くの企業の支援態勢を整える。高速の専用線が整備された,これまで以上の部屋数を確保できるオフィス・スペースをサンノゼ市の中心部に確保した。現在の場所から2005年11月中に移転する予定。

 BICは,ハイテク分野の国内ベンチャー企業や起業予定の個人の米国進出を支援するために,ジェトロが2001年に開設した組織。3カ月から最長2年の間,無料でオフィス・スペースを提供するほか(電話やファクシミリなど通信料金は実費),ビジネス・プランの無料コンサルティング,市場調査などを行う。シリコンバレー有力大学との連携サポートや,各種ネットワーキング・イベントの開催を通じて,ベンチャー・キャピタルなどへのネットワーキングを支援する。

 開設当初は支援期間1年の「Standard program」のみだったが,2005年4月から,市場調査などを目的とした3カ月間の短期入居プログラム「Short program」を設けたほか,支援期間を最長2年に変更していた。ここ数年,シリコンバレー地域のベンチャー・キャピタルによる投資実績が上向きつつあり,BICのプログラム利用を目指す企業が増えてきたことが背景にあるという。「2004年の米Google Inc.による株式公開が,シリコンバレー地域での投資環境好転の大きな刺激となった。2000年ころのバブル崩壊によって冷え込んでいたが,あの案件事例から,有望案件には相応のお金が集まることが示された」(ジェトロ BICの星野氏)。こうした状況を反映してか,BICが四半期ごとに行っているStandard programの入居企業選考への応募が,ここ数年数を増しているという。Standard programでの入居には,事業性などを審査する3回の選考過程がある。一方でShort programでは書類審査と面接だけで済むという。既に21社の企業がBICを卒業しており,現在も6社ほどが入居している。

 BICではビジネス面での支援のほか,米国での生活全般に関する相談にも対応する。「どこに住むのか,車の免許をどうするか,クレジット・カードの発行など,米国進出当初は生活面での苦労も多いはず。こうした面でのサポートも惜しまない」(ジェトロ BICの星野氏)。ジェトロによれば,シリコンバレー地域では日本からの投資金額が相当な割合を占めるにもかかわらず,投資の受け入れ先となるベンチャー企業の数が,インドや中国発の企業数に比べて圧倒的に少ない状況にあるという。こうした状況を打開する狙いから,同地域での日本発の起業を側面支援する考えだ。なおジェトロによる同様のベンチャー支援組織では,米イリノイ州シカゴに「TIC(Technology Innovation Center)」もある。こちらでは米Northwestern Universityと連携したインキュベーション活動を行っている。