米Broadcom Corp.,スウェーデンEricsson社,NEC,フィンランドNokia社,パナソニックモバイルコミュニケーションズ,そして米Texas Instruments Inc.の6社は,米QUALCOMM Inc.が第3世代携帯電話の基本特許ライセンスで反競争的行為を働いているとして,欧州委員会に対し提訴した(発表資料)。

 6社は,QUALCOMM社が第3世代携帯電話方式「W-CDMA」関連技術の基本特許ライセンスに関して,各種の反競争的行為を働いているとし,欧州委員会に対してその調査および,QUALCOMM社の行為の停止を要求した。QUALCOMM社は同日,「6社の主張は不正確」とするコメントを発表した(発表資料)。なおBroadcom社は米国でも,QUALCOMM社を独占禁止法の疑いで米ニュージャージー州連邦地方裁判所に提訴していた(Tech-On!関連記事)。

 QUALCOMM社の反競争的行為として6社が主張しているのは,QUALCOMM社が同社保有のW-CDMA関連特許の他メーカーへのライセンスに当たり,競合メーカーの市場排除を狙った動きを採っているほか,不当に高いロイヤルティを請求している,との疑いである。発表資料によれば,以下の2点の主張となる。

(1)競合メーカーの市場での排除を狙い,W-CDMA向け製品の開発に必須となる特許のライセンスを競合メーカーに対して拒んでいる。携帯電話機メーカーに,不当に安いライセンス料金を提示することで,自社のW-CDMA関連製品の利用を促進し,競合メーカーの市場参入を妨害している。
(2)W-CDMA関連技術には,QUALCOMM社の保有する特許が使われている比率が,CDMA2000に比較して小さい。ところが,W-CDMA対応の携帯電話機に対してもCDMA2000と同比率のロイヤルティ支払いを要求している。
 
 QUALCOMM社が,同社保有の関連特許を平等(fair, reasonable, and non-discriminatory)な条件で標準団体加盟企業にライセンスするとの合意事項に違反しているとの主張である。
 
 これに対してQUALCOMM社は,6社の申請書の内容をまだ確かめていないとしながらも,6社の発表資料についてコメントし,「6社の主張は事実として不正確であり,法的にも正しくない」とした。QUALCOMM社は既に130社が同社とライセンス契約を結んでいることを例に挙げ,「当社は幅広く第3世代携帯電話の技術のライセンスを行っており,同市場の健全な競争に貢献している」と主張した。加えて,「今回の欧州委員会への提訴は,市場が第2世代から第3世代へ移行する中で,それによって損失が発生しうるプレーヤを中心とした反発に過ぎず,驚くべきことではない」(QUALCOMM社 CEOのPaul Jacobs氏)としている。

 Broadcom社によれば,欧州委員会が各社の申請を調べ,独占禁止法違反の疑いとして調査を開始するまでには,さらに数週間がかかる見込みだ。「もし,調査が開始されたとしても,これまでの経験で言えば,結果が出るまでには約1年間程度かかるだろう」(Broadcom社)という。