小野寺氏。「音声通話の定額制,ボーダフォンの反響が大きければ考えるが今のところ予定はない」
小野寺氏。「音声通話の定額制,ボーダフォンの反響が大きければ考えるが今のところ予定はない」
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 KDDIは,2005年度中間期(4月~9月)の連結決算を発表した。売上高は対前年同期比横ばいの1兆4688億円,営業利益は同3%増の1667億円,純利益は同30%増の1014億円となった。主力のau事業が2ケタの増収増益を記録し,固定通信事業の赤字を補っている。半期の純利益ベースで同社として初めて1000億円の大台を突破した(発表資料)。

純増シェアは5割超,解約率は過去最低

 au事業の売上高は対前年同期比10%増の1兆1178億円,営業利益は同29%増の1852億円。営業利益率は同2.4ポイント増の16.6%だった。大幅な増収増益を実現した背景の1つが,契約者を順調に獲得していることだ。2005年9月末の契約数は2070万と,この半年で116万件増加した。中間期の純増シェアで54.5%を獲得,累計契約数のシェアもこの半年で22.5%から23.2%へ伸長している。「CDMA2000 1x EV-DO(サービス名称は『1X WIN』)において他の携帯電話事業者からの乗り換え契約を獲得したことが奏功している」(同社)という。

 第2四半期(7月~9月)の解約率は前四半期より0.05ポイント,前年同期より0.28ポイントそれぞれ下げ,過去最低の1.21%に抑えた。第2四半期の1契約当たりの月間平均収入(ARPU)は前年同期比110円減の7190円(うち音声ARPUは5300円,データARPUは1890円)。1契約当たり月間平均通話時間(MOU)は同8分減の163分だった。1X WINについては,いわゆる「ダブル定額」の料金体系の導入以降,それまで低頻度の利用にとどまっていたユーザー層も一定頻度データ通信を利用するようになり,ARPUを下支えする効果が出ているという。

 中間期の固定通信事業の売上高は対前年同期比4%減の2862億円。営業損益は前年同期の24億円の黒字から,295億円の赤字へ転落している。直収電話サービス「メタルプラス」の拡販費用がかさむ一方,9月末現在の契約数が136万,開通済みの契約数が68万と伸び悩んでいることが響いた。

「音声通話の定額制,ボーダフォンに追随しない」

 KDDI 代表取締役社長の小野寺正氏は決算発表説明会において,先にボーダフォンが発表した音声通話の定額制サービス(Tech-On! 関連記事1)について触れ,「現在の財務基盤であれば,当社が同様のサービスを展開して追随するのは簡単だ。しかし,現時点ではそのつもりはない」と述べた。その理由として,契約者における携帯電話機の利用がデータ通信主体になっていることを挙げ,「現時点では,データ通信の利用を促進するような施策でないとARPUの向上に寄与しないと考えている。音声通話において定額制のような施策を導入することが本当にいいのか疑問だ。ただし,ボーダフォンのサービスの反響が大きいようであれば,今後対応を考えていく」とした。

 韓国Pantech&Curitel Communications, Inc.(P&C社)製の携帯電話機の発売(Tech-On! 関連記事2関連記事3)については,「ポイントはP&C社の単独開発ではなく,当社との共同開発であるということ。海外の携帯電話機メーカーが日本市場に向けた端末を開発する上で,独自に開発したのでは消費者に受け入れられる製品を作るのは難しい」と指摘した。その上で,「当社にとって端末の調達コストの低減は,販売時のインセンティブ削減につながるものであり重要だ。これについては海外メーカー,国内メーカー問わず,各端末メーカーと共に考えている」とした。

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