総務省は,情報通信審議会から「小電力の無線システムの高度化に必要な技術的条件」のうち「移動体識別システム(UHF帯電子タグシステム)の技術的条件」について答申を受けた(報道資料)。内容は,950MHz帯の周波数を利用する「パッシブ型UHF帯無線タグ(RFIDタグ)」に関して,数mの通信距離が可能な高出力型の干渉回避技術と,数十cm程度の低出力型無線タグを利用可能にする,というもの。総務省は2005年末,あるいは2006年1月までに電波法の省令改正手続きを終える予定である。

 今回の答申のうち,高出力型UHF帯無線タグの干渉回避技術は,2005年4月に総務省が日本で利用可能にしたUHF帯無線タグの必須仕様に含まれておらず,いわば「宿題」となっていた技術。日本では952MHz~954MHzの2MHz分しか高出力型UHF帯無線タグに利用できない。26MHz分の中で周波数ホッピングなどを利用する米国の仕様では,リーダー/ライター間の干渉回避がほとんど機能しないため,必要となった(Tech-On!の関連記事)。

 今回の干渉回避技術の主体は「Listen Before Talk(LBT)」 と呼ぶ技術で,一種のキャリヤ・センスである。欧州でもこのLBTを採用しており,米国の無線タグ・メーカーの多くも,LBTに対応する方針である。

 日本では,関東地区での家電量販店大手であるヨドバシカメラがUHF帯無線タグを同社の物流拠点へ2006年5月末に導入することを決めている(『日経エレクトロニクス』の関連記事)。今回の答申で,日本でも本格的にUHF帯無線タグが利用可能になる。他の企業にも導入が広がる可能性が出てきた。

【訂正とお詫び】当初の記事では,「利用可能になるのは2006年4月から」としていましたが正しくは「2005年末,あるいは2006年1月から」です。記事は既に修正してあります。お詫びして訂正いたします。

 


2005年10月10日号の『日経エレクトロニクス』では,UHF帯無線タグの可能性や干渉回避技術の実装上の課題などについて,ヨドバシカメラによる導入方針の詳細と共に解説した記事「無線タグにヨドバシ・ショック,UHF帯無線タグが日本でも船出」を掲載しています。