「オタク」の優秀な想像力は新製品開発に役立つ---。
 野村総合研究所は,国内のマニア消費者層,いわゆるオタクに関する2004年からの研究成果を2005年10月6日に発表した。オタクが産業界で果たす役割などを解説した。

 今回,野村総研がオタクと定義したのは,「こだわりの対象に所得や余暇の全てを費やす人で,かつ,そのこだわりに関して特有の心理を持つ人」。「特有の心理」を野村総研は,グッズなどを揃えたいという収集欲求やインターネットなどで自分の意見を広めたいという顕示欲求など6項目に分類している(下図)。

 こうしたオタクはこれまでマニア,コレクターと呼ばれてきた人も含め,延べ172万人に上り,市場規模は4110億円に達すると野村総研は推計する。同社によれば,市場に占めるオタク人口が多いとみられる「主要12分野」は,コミック,アニメーション,芸能人,ゲーム,自作PC,AV機器,携帯型IT機器,自動車,旅行,ファッション,カメラ,鉄道。「社会文化論の中でとらえるのであれば,いわゆるアキバ系といった狭義のオタク像に絞った研究も意義深いと思われるが,マーケティングなど産業に生かすための研究材料とする意味で,今回は広義にとらえた」とその意図を説明する。

 野村総研の分析によれば,現代のオタク像は大きく5つに分けられる(右図)。
(1)家庭持ち仮面オタク:PCやAV機器にこだわりを持つ一家の父親に多い。小遣いの中で比較的穏やかなオタク活動を営む。
(2)わが道を行くレガシーオタク:独自の価値観に基づいた批評活動をインターネットなどで行う。メカ系やグラビア・アイドル好きの20~30代男性に多い。
(3)情報高感度マルチオタク:複数分野にこだわりを持つ若年層が中心。インターネットで情報収集,交流を盛んに行い,自分のこだわりの深さに対する屈託がない。
(4)社交派強がりオタク:「ガンダム」などかつて体験したブームの世界観,価値観を持ち続け,それを周囲に広めることに喜びを見出す。30代男性に多い。
(5)同人女子系オタク:コミックやアニメの同人誌を友達に隠れて創作する女性。アキバ系や萌え系の男性もこれに含まれる。


5タイプの中で最多数という「家庭持ち仮面オタク」

批評好きな「わが道を行くレガシーオタク」

若年層が多い「情報高感度マルチオタク」

30代男性が多い「社交派強がりオタク」

こっそり同人誌を創作する「同人女子系オタク」