NTTドコモの実演例。容量約500kバイトの画像ファイルの場合,データ伝送に要する時間は約1秒。
NTTドコモの実演例。容量約500kバイトの画像ファイルの場合,データ伝送に要する時間は約1秒。
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ロームが出展した評価ボード。黄線内に赤外線の受発光デバイスが取り付けてある。
ロームが出展した評価ボード。黄線内に赤外線の受発光デバイスが取り付けてある。
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 NTTドコモおよびロームは,赤外線通信のデータ伝送速度を3.8Mビット/秒以上に高めた新規格「IrSimple」に関する実演を,それぞれ「CEATEC JAPAN 2005」で披露した。

 NTTドコモのデモンストレーションは,携帯電話機のメモリに蓄積した画像データを,テレビ受像機に転送して再生したり他の携帯電話機と受け渡ししたりする動作を,試作端末を利用して実際に体験できる。実用化の時期は未定だが「前向きに検討している段階。要素技術は完成している」(NTTドコモ)。将来はDVDレコーダやプリンターなど,周辺機器への展開を視野に入れているという。

 ロームは,IrSimple対応端末の開発環境を出展した。赤外線の送受信回路に必要となるコントローラ回路をFPGAに実装して,画像データをやり取りする実演を見せた。IrSimple対応コントローラICとして製品化する計画である。機器メーカーの採用を容易にするため,FIFOメモリを5Kバイト搭載してDMA(direct memory access)転送を使わなくて済むようにした。IrSimpleのプロトコル・スタックにはACCESSの製品を活用した。

Bluetoothとはすみ分ける


 IrSimpleであれば,200万画素のカメラで撮影した容量約500kバイトの画像ファイルのデータ伝送に要する時間は約1秒と非常に早い(Tech-On!の関連記事)。2~3分を要する現行の携帯電話機の赤外線通信に比べて大幅に短縮できる。

 携帯機器向けの無線インタフェースにはBluetoothなどもあるが,NTTドコモは「ファイル転送用には赤外線通信が向く。ハンドセットなどの用途に向くBluetoothとはすみ分けられる」(NTTドコモ)。実装コストの点でも「Bluetoothに比べて安価にできるのではないか」(NTTドコモ)とする。

 IrSimpleは接続プロトコルを簡素化したりバースト転送を導入するなどして,赤外線通信の転送時間の短縮を図ったもの。NTTドコモが出展した携帯電話機はシャープと共同開発したFOMA端末ベースの試作機である。端末に加えた改良は大きく2つある。1つは携帯電話機に組み込んであるSIR対応の赤外線モジュールをFIR対応の高速品に変更したこと。もう1つがIrSimple対応ミドルウエアを搭載した。