【図1】成形実演。取り出しロボットで表面処理後のアルミの展伸材を金型に送り,成形後取り出す
【図1】成形実演。取り出しロボットで表面処理後のアルミの展伸材を金型に送り,成形後取り出す
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【図2】ソニーが2005年7月に発売したデータプロジェクター「VPL-CS20/CX20」(上)。左下が筐体に採用したアルミの展伸材で厚さは0.6mm。右下がその展伸材を表面処理後に取り付けのためのボスをインサート成形により作りこんだもの。大成プラスはボスを成形後にアルミ表面をヘアライン加工してソニーに納めている。コンパクトなスタイルを追求した「VPL-CS20/CX20」では,アルミダイカストや樹脂成形では肉厚が厚すぎて小型・軽量化ができなかったために,この方法しかなかったという
【図2】ソニーが2005年7月に発売したデータプロジェクター「VPL-CS20/CX20」(上)。左下が筐体に採用したアルミの展伸材で厚さは0.6mm。右下がその展伸材を表面処理後に取り付けのためのボスをインサート成形により作りこんだもの。大成プラスはボスを成形後にアルミ表面をヘアライン加工してソニーに納めている。コンパクトなスタイルを追求した「VPL-CS20/CX20」では,アルミダイカストや樹脂成形では肉厚が厚すぎて小型・軽量化ができなかったために,この方法しかなかったという
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【図3】アルミ展伸材に穴を空けたものを二つ合わせ,インサート成形することによって樹脂で接合したテストピースの両端を引っ張る試験。500kg/cm2まで耐えるという
【図3】アルミ展伸材に穴を空けたものを二つ合わせ,インサート成形することによって樹脂で接合したテストピースの両端を引っ張る試験。500kg/cm2まで耐えるという
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 大成プラスは,アルミニウム合金に特殊な表面処理を行うことによりナノスケールの凹凸を作りこみ,樹脂との一体成形を可能にした「ナノ・モールディング・テクノロジー」を開発,「IPF(国際プラスチックフェア)2005」(2005年9月24~28日,幕張メッセ)で成形実演を行った(図1)。同時に,ソニーが2005年7月に発売したデータプロジェクター「VPL-CS20/CX20」の筐体に採用されたことを明らかにした(図2)。今後,薄型ディスプレイの筐体や自動車の構造体への採用を狙う。

 同技術はまず,アルミ合金に湿式の表面処理を行う。水槽を使って,(1)アルカリ水溶液の処理1分,(2)酸水溶液の処理1分,(3)ある特殊溶液による処理(同社は「T処理」と呼んでいる)1分---と合計3分の処理を行った後,水洗乾燥する。(3)のある特殊溶液がこの技術のミソである。これにより,アルミ表面に径20~30nm,深さも20~30nm程度のナノスケールの凹凸ができる。

 表面処理したアルミ合金の薄板を射出成形の金型にインサートして,硬質樹脂を成形することにより,この凹凸に樹脂が入り込んで,アンカー効果により接合する,という仕組みだ。各種破壊テストで,接合部ではなく,樹脂の材料部が破壊されることが分かったという。会場では,テストサンプルの引っ張り試験を行い,500kg/cm2の荷重まで耐えることを実演していた(図3)。

 接合可能な樹脂は結晶性樹脂であるPBT(ポリブチレンテレフタレート),PPS(ポリフェニレンサルファイド)のみで,非晶性樹脂はまったく接合しない。この2種の結晶性樹脂が溶融時の流動性が高く,凹凸に入り込めるためだと思われる。アルミ合金については,1000~7000番系の展伸材なら問題ない。鋳造材も展伸材ほどではないが接合するという。

 大成プラスは同技術を使ったビジネスとして,(1)同技術を使って部品製造そのものを請け負う,(2)表面処理を請け負う,(3)技術をライセンスする---といった方法を考えている。ソニーの例は(1)で,今回IPFで公表することによって,多様な用途を開拓して行きたいとしている。

 想定している用途は,デジタル家電や自動車の軽量化が要求される部品などだ。例えば液晶,PDPなどの大型薄型テレビでは,現在樹脂の射出成形品などが使われることが多いが,大型化が急速に進んでおり重量増が問題になってきた。そこで本体部をアルミの薄板とし,ボスなどの取り付け部を樹脂とすることにより軽量化が可能ではないかと見る。自動車でもトランクルームなど鋼板が使われている部品をアルミの薄板を使うことによって計量化できる可能性があるという。