Evolved UTRAのエアー・インタフェースの特徴(NTTドコモの講演資料)
Evolved UTRAのエアー・インタフェースの特徴(NTTドコモの講演資料)
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 NTTドコモは,「Super3G」と同社が呼ぶ次世代の無線通信技術の概要について2005年9月20日から開催中の「電子情報通信学会 ソサイエティ大会」で発表した。Super3Gの実態は, W-CDMAやHSDPAの後継として移動体通信関連の業界団体3GPPが検討を始めたデータ通信に特化した通信方式で,「Evolved UTRA and UTRAN」(以下,Evolved UTRA)と称するものである。NTTドコモなどは2010年までの実用化を視野に入れて,標準化活動と研究開発に取り組んでいる。今回の発表は,3GPPにおいて概ね合意されているEvolved UTRAの基本技術の内容と,NTTドコモが提案する独自技術についてまとめて紹介したもの。3GPPの場で議論されてきた内容も含まれるが,国内で発表するのは今回が初めてという。

 Evolved UTRAは,既存の3G方式との親和性を確保するために1.25MHzから最大20MHzまでのマルチチャネル帯域幅に対応する方針である。さらに3G方式に比べて伝送遅延や接続遅延を短縮し,最大データ伝送速度と周波数利用効率を向上させるといった要求項目が固まっている。

 下りリンクの無線アクセス方式については既に,3GPPにおいて次の(1)~(4)の技術の採用の合意があるという。すなわち(1)OFDMベースの無線アクセス,(2)MIMO技術による高効率伝送,(3)Localized FDMおよびDistributed FDMによる広義の周波数ダイバーシチの実装,(4)マルチキャスト/ブロードキャスト,である。NTTドコモはさらに,下りリンク向け技術として可変拡散率(VSF)制御や,マルチチャネル帯域幅に適したセルサーチ法などの採用を働きかける(講演番号:B-5-40)。

 Evolved UTRAの上りリンクの特徴はシングルキャリア方式を検討している点にある。下りリンクで採用したOFDMなどマルチキャリア方式の無線技術は採用しない見通しだ。端末の消費電力を抑え,カバレッジの広域化を図るためだ。さらに(1)Localized FDMAおよびDistribute FDMAによるセル内ユーザーの直交化,(2)周波数領域等価による自チャネルのマルチパス干渉の抑圧,(3)衝突型チャネルとスケジュール型チャネルに対応して要求遅延に応じたチャネル・セットアップ,(4)MIMO技術による高効率伝送,といった技術が検討されている。NTTドコモはこれらに加えて,可変拡散率(VSF)制御技術や,周波数および時間領域におけるセル内ユーザーの直交化技術などの採用を働きかける(講演番号:B-5-41)。

 NTTドコモは,Super3Gにおいて下り最大100Mビット/秒,上り最大50Mビット/秒のデータ伝送速度を目指している。第4世代移動体通信(4G)の100Mビット/秒~1Gビット/秒には届かないが,Super3Gに投入する技術は「4G向けに開発した技術を先取りしたもの」(同社)と位置づける。