写真1:講演するエルピーダメモリ代表取締役社長の坂本幸雄氏。
写真1:講演するエルピーダメモリ代表取締役社長の坂本幸雄氏。
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図1:広島エルピーダメモリの生産能力。「E300第2棟」が2005年10月の稼働を控える。
図1:広島エルピーダメモリの生産能力。「E300第2棟」が2005年10月の稼働を控える。
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図2:90nmルール品で「すでに80%以上の歩留まりを達成」。
図2:90nmルール品で「すでに80%以上の歩留まりを達成」。
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図3:2008年には携帯電話機向けのボリュームゾーンは1Gビットに。
図3:2008年には携帯電話機向けのボリュームゾーンは1Gビットに。
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図4:注力するデジタル家電向けで最も伸びが大きいのは「デジタルTV」。
図4:注力するデジタル家電向けで最も伸びが大きいのは「デジタルTV」。
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 エルピーダメモリ代表取締役社長の坂本幸雄氏は,オーストラリアMacquarie Bankのグループ企業であるマッコーリー・ジャパンが開催したセミナーで,「革新的メモリビジネス,戦略と実践」と題してエルピーダの事業戦略について語った。

 「エルピーダは,2006年度第2~3四半期(2006年7~12月)に間違いなく世界第3位のDRAMメーカーになる」。講演の冒頭,坂本氏はためらいなく言い切った(写真1)。社長就任時に同氏が掲げた3大目標(Tech-On!関連記事1)の最後の一つの達成時期を,今後ほぼ1年以内に定めた形だ。

「3~4年以内に300mm対応品を10万枚/月で量産」

 その自信の根拠として挙げた同社のDRAM事業の強みは,(1)300mmウエーハ対応品の生産能力の高さ,(2)研究開発と製造への事業の特化,(3)高付加価値品への注力の三点である。

 (1)300mmウエーハ対応比率の高さを示す数字として,2005年度第4四半期(2006年1~3月)時点での,Siファウンドリへの委託を含めた同社のDRAM生産能力を示した。300mm対応が8万6000枚/月,200mm対応が2万枚/月(300mmウエーハ換算)となり,300mm対応比率は82%に達する見込みである。

 300mm対応のうち,外部委託を除く5万4000枚/月が,広島エルピーダメモリ敷地内にあるフル稼働中の「E300第1棟」と2005年10月の稼働を控える「E300第2棟」を合わせた生産能力である(Tech-On!関連記事2,図1)。「一つのファブで5万枚/月を製造できるのは世界でもエルピーダだけ。第2棟の稼働で,広島エルピーダは世界一のDRAM工場になる」(坂本氏)。

 「E300第2棟」では,今後さらに1万5000枚/月の生産能力を増強する予定である。「E300第1棟」と「E300第2棟」,2005年9月時点で建屋のみ完成している「E300第3棟」で予定する3万枚/月を合わせて,目標とする10万枚/月の300mm対応品の生産体制を「当初の見込みより早く3~4年以内に整えられそうだ」(坂本氏)とする。

 300mm対応品の設計ルールについては,110nmから90nmへの移行を進めており(Tech-On!関連記事3),2005年12月時点で製造比率を50%に高める計画である。90nmルール品では,すでに80%以上の製造歩留まりを達成しているとする(図2)。

開発と製造に投資を集中,「付加価値なき」テスト工程は外部へ

 (2)研究開発と製造への事業の特化の一環として,同社は2005年8月に,アドバンテスト,米Kingston Technology Japan, LLC,および台湾Powertech Technology Inc.と合弁で,DRAMのデバイス・レベルでのテスト工程を請け負うテスト専門会社「テラプローブ」を設立した(Tech-On!関連記事4)。テスト工程を製造ラインの外に出す形をとったのは,「テストは“所要時間×コスト”を最小限にすることだけが課題の工程。そこに付加価値は生まれない」(坂本氏)との判断からだ。テストやパッケージングを外部に委託し,前工程に投資を集中することで「投資効率は1.3~1.4倍に向上する」(同氏)と見積もる。

 (3)高付加価値品への注力については,同社は以前から「プレミア・ビジネス」と名づける(a)携帯電話機向け,(b)デジタル家電向け,(c)サーバ向け,(d)Siファウンドリ受託品の四分野にウェイトを置いている(Tech-On!関連記事5)。2005年度第1四半期(2005年4~6月)時点で,プレミア・ビジネス比率は74%にまで高まっている。特に,携帯電話機向けとデジタル家電向けの伸び率が大きく,両者を合わせた売上高は2003年度~2005年度の2年間で約5倍に膨れ上がった。

 携帯電話機向けでは,ボリュームゾーンが現在の128M~256Mビットから,2008年に1Gビットまで増加すると見込み,対応する製品を順次投入していく構えである(図3)。デジタル家電向けについては,デジタルTV向けが今後最も期待できる領域としている(図4)。

NECと日立の株式売却の影響は「皆無」

 これら(1)~(3)を事業基盤として,エルピーダは2004年度第4四半期(2005年1~3月)時点で世界第5位のDRAM市場シェアを2006年度第2~3四半期には第3位に向上させることを狙う。その時点でのエルピーダのシェアの具体的な数字については「1年後のわれわれの業績を楽しみにしてほしい」(坂本氏)と言うにとどめた。

 なお,2005年8月末に,NECと日立製作所が同年9月末までに両社が所有するエルピーダの株式を一部売却すると発表した件(Tech-On!関連記事6)については,「エルピーダのビジネスや特許の扱いへの影響は一切ない」(同氏)とコメントした。