図 日立製作所の読み取り距離70cmのミューチップ用アンテナ。左の青い部分が従来のダイポール型アンテナを使うインレット。
図 日立製作所の読み取り距離70cmのミューチップ用アンテナ。左の青い部分が従来のダイポール型アンテナを使うインレット。
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 日立製作所は,同社の「ミューチップ」を利用した2.45GHz帯RFIDタグ(以下,無線タグ)に装着して読み取り距離を従来の約30cmから約70cmに延長するアンテナを開発した。流通システムの中での商品の仕分け業務などでの利用を想定する。2006年3月の商品化を予定しているという。

原理は八木アンテナ

 新しいアンテナは,76mm×62mmの薄い紙のシート2枚の間にAl箔を挟んで張り合わせたもの。このシートの一定の位置に,ミューチップで一般に利用するダイポール型のインレットをテープなどで張り付けるだけで,読み取り距離70cmの無線タグとして機能するようになる。

 日立製作所は,このアンテナの原理を「八木アンテナと同じ」(同社)と説明した。八木アンテナは,数本のダイポール型アンテナ素子を平行に並べた形状をしており,一般家庭のテレビ放送用アンテナとして使われている。八木アンテナの構造は,3つの機能に分かれている。つまり,「導波器」と呼ぶ電波が来る側の何本かのアンテナ素子群,「反射器」と呼ぶ電波が来る側と反対側にあるアンテナ素子,そして「放射器」と呼ぶ,導波器と反射器との間にあって,ケーブルが接続されたアンテナ素子,の3機能である。導波器と反射器は,放射器に電気的に接続されていない。

 今回のアンテナは,Al箔をあるパターンに加工し,導波器と反射器の役割を果たすようにしている。そして,張り付けたインレットが放射器となる。この放射器はAl箔と電気的に接続しないため,張り付けの際に細かい位置合わせを行う必要がないという。

 一般の八木アンテナと異なるのは,電波を受ける方向がシートの法線方向で,しかもインレットを張り付けた側に限られる点。日立製作所は,このアンテナがこうした指向性を持つ理由やAl箔のパターンについて「特許申請中で今は明らかに出来ない」とした。

 日立製作所は新しいアンテナのコストについても「どこまで下げられるか見極めている最中」(同社)として明らかにしなかった。ちなみに,従来のインレットに張り付けたミューチップについては「100万個単位の注文があり,1個10円台を実現済み。注文が億個単位になれば,1個5円も達成可能」(日立製作所)とする。