ステンレス筐体。側面に5つの嵌合用の凹部が見える。手前の側面にも同じ形状の凹部が5つある。奥にある円形の白いシートは圧電スピーカである。
ステンレス筐体。側面に5つの嵌合用の凹部が見える。手前の側面にも同じ形状の凹部が5つある。奥にある円形の白いシートは圧電スピーカである。
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iPod nanoのプリント配線基板。電池はLiイオン2次電池。2005年1月に発売したiPod Shuffleと同様,Liイオン2次電池とプリント配線基板をハンダで接合している。
iPod nanoのプリント配線基板。電池はLiイオン2次電池。2005年1月に発売したiPod Shuffleと同様,Liイオン2次電池とプリント配線基板をハンダで接合している。
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1.5インチ型液晶パネル。画面解像度は176×132画素である。バックライトには白色LEDを使う。バックライトも含めたパネルの厚みは2.4mmである。
1.5インチ型液晶パネル。画面解像度は176×132画素である。バックライトには白色LEDを使う。バックライトも含めたパネルの厚みは2.4mmである。
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 なぜ,iPod nanoの厚みは7mmと薄くできたのか——。日経エレクトロニクス分解班は携帯機器に詳しい技術者の協力を得て,2005年9月8日に米Apple Computer,Inc.が発表した携帯型音楽プレーヤ「iPod nano」を早速,開けてみた。分解したのは2Gバイト品である。

 iPod nanoは液晶ディスプレイのある表面がプラスチック製,裏面がステンレス製の筐体を用いている。それぞれ10カ所のツメと凹部があり,きっちり嵌合している。両者の間に継ぎ目がない構造は,従来のiPodと同様だ。コネクタ部からマイナス・ドライバーを挿し込み,悪戦苦闘すること15分,なんとかして筐体を外す。中身のプリント配線基板が顔をのぞかせたその瞬間。技術者の第一声は…

 「あれ,ICの数が多いな」——。それもそのはず。コーデックLSIは英Wolfson Microelectonics plc製,電源制御ICはオランダRoyal Philips Electronics社製,フラッシュ・メモリ用のコントローラICは米Silicon Storage Technology,Inc.製といった具合に,すべて汎用品を使用している。プロセサは毎度おなじみの米PortalPlayer,Inc製である。携帯電話機やゲーム機などではコーデックLSIと電源制御ICを1チップ化することが多いが,汎用品を使うiPod nanoでは別々になっている。

 専用のLSIを設計せずに汎用品を用いることから,製品コンセプトが決まれば,部品の用意にそれほど時間はかからないとみられる。「製品コンセプトをとにかく大事にして,開発期間の短縮を狙っているようだ。製品コンセプトを決めてから半年くらいで試作機を作ったのではないか」。

 筐体の外形寸法からもApple社のこだわりが透けて見えるという。ノギスを使って外形寸法を測った結果,きっちり90.0mm×40.0mm×7.0mm。小数点以下をぴったりと揃えている。

0603部品がワンサカ

 基板実装にはApple社の意気込みが見て取れる。コイルなどの受動部品の多くに0603部品をふんだんに使っているのだ。1005部品は数えるほどしかない。プリント配線基板にはまだ実装できる空きがあり,部品コストを考えれば1005部品の点数をもっと多くしてもいいくらいである。

「この基板を見るとApple社が積極的に0603部品を使おうとしているように見える」。

 0603部品は,面積が0.6mm×0.3mmと極めて小さな受動部品類である。実装が難しいため,軽薄短小化の要求が厳しい携帯電話機でもようやく主流になりつつある状況だ。iPod nanoは,最新の携帯電話機と同等の実装技術を使いこなした格好である。

 注目のフラッシュ・メモリは東芝製。4Gバイト品では韓国Samsung Electronics Co.,Ltd.製を使用しているとの報道もあり,どうやら両社から購入しているようだ。9月7日付けの日経産業新聞によると,NAND型フラッシュ・メモリの2Gビット品の価格は1800円~2000円。2Gバイト品を製造するのに,メモリの部品コストだけで約1万5000円を要する計算である。なぜ,Apple社は2Gバイト品で2万1800円,4Gバイト品で2万7800円の値付けが可能だったのか。今後,本誌で詳細を追っていく。(日経エレクトロニクスは,iPod nanoに関する記事を,今後掲載する予定です)