総務省は2005年9月12日,情報通信審議会 情報通信技術分科会 UWB無線システム委員会をほぼ1年ぶりに開催し,UWBについての規制緩和に向けた現時点での議論の取りまとめと今後のスケジュールの確認を行った。その中で,事務局の総務省 移動通信課は「2006年1月にも同委員会で最終的な結論をまとめ,パブリック・コメントなどを受け付けた後,2006年3月末までに情報通信審議会の答申をいただく」という段取りを明らかにした。このスケジュール通りであれば,早ければ2006年初夏にも日本でUWB製品を発売できるようになる。

 一方,UWBの電波の出力規制値については2005年8月25日の「技術的条件検討作業班」の会合に対して,事務局が提出した送信出力のマスク案を確認しただけに留まった(Tech-On!の関連記事)。このマスク案は,(1)UWBの利用は屋内のみとする,(2)3.4GHz~4.8GHzは基本は−70dBm/MHz以下。ただし,第4世代移動体通信システムや放送(FPU:field pick-up)などとの干渉を回避する技術が確立すれば−41.3dBm/MHz以下となる,(3)4.8GHz~7.25GHzは−70dBm/MHz以下,(4)7.25GHz~10.25GHzでは,−41.3dBm/MHz以下,とするものである。

「2006年3月時点では厳しい基準で」

 UWBの死活を握っているかに思える「干渉回避技術」だが,その中身はブラックボックスで,作業班の主要メンバーでさえ「初めて聞いた」「全然分からない」「具体化はこれから。現時点での見通しはまだない」という意見だった。

 ただし,今回はおぼろげながらも次第に輪郭が見え始めている。同委員会 主査である東京工業大学大学院 教授の安藤 真氏は「キャリヤ・センスのようなものになるのではないか」という見方を示した。同委員会に出席した技術者は,本誌の質問に対して「UWBのチップ・メーカーは各社,既に水面下で開発済みと聞く」「エネルギーを検知するのだろう」などとコメントした。

 干渉回避技術の確立のスケジュールについては,総務省の2006年3月末という日程に間に合わせるのは「おそらく無理。3.4GHz~4.8GHzの帯域は当初は−70dBm/MHz以下前後で開放して,後は走りながら考えることになる」(同委員会の関係者)。

 総務省は,2005年10月12日~20日にスイスのジュネーブで開催するITU-Rの会合でにこの日本案を提案する計画。その中で出てきた議論を考慮しながら,国内での最終的なマスク値をまとめるという。