中国の携帯電話機メーカーが2004年第3四半期に始まった不況の長いトンネルから抜け出せない。生産回復の兆しすら見えない状況だ。トップの中国Ningbo Bird社でさえ,在庫問題は解決していない。同社はそれまでの月産60万台ペースから2005年4月,5月にいったん同100万台近くまで戻したが,6月以降は再び月産50万~60万台まで生産を絞った。シェア拡大を狙って生産を増やしても,在庫を増やすだけに終わるからだ。中国TCL Mobile Communications社や中国Amoi Electronics社など2位以下のメーカーは,さらに厳しい状況だ。2003年のピーク時には50%近かった中国メーカーの中国市場における販売台数シェアは,2005年7月に約40%まで下がってしまった。

図●中国の携帯電話機メーカーの生産量の推移(2005年第2四半期までは実績,2005年第3四半期からは予測)
輸出分を含むが比率は少ない。Ningbo Bird社に仏Sagem社向け生産を含まない。同様にTCL Mobile Communications社に仏Alcatel社向け生産を含まない。

最も売れている機種はモノクロ

 中国市場で中国メーカーがシェアを落としたのは,フィンランドNokia Corp.の攻勢によるものだ。この1年で同社のシェアは7ポイント上がって20%を超えた。Motorola, Inc.や韓国Samsung Electronics Co.,Ltd.でさえシェアを維持するのがやっとの中,Nokia社の好調だけが目立つ。それは,中国市場の1/3を占める1000元以下の価格帯の市場を狙ったNokia社の戦略が功を奏したからだ。この市場で同社の販売台数シェアは30%近い。

 実は,2005年7月に中国で最も売れた機種は,Nokia社のモノクロ機(約500元)である。この影響をまともに受けたのが,これまでローエンド機市場でシェアを持っていた中国の携帯電話機メーカーだ。ハイエンド機は外資系メーカー,ローエンド機は中国メーカーという構図はもう当てはまらない。

規制緩和と元切り上げで環境はさらに厳しく

 2004年末に中国政府が,中国で携帯電話機を販売するためのライセンス条件を緩和した。これにより参入する中国メーカーは後を絶たない。したがって,Nokia社のシェア拡大で小さくなったパイをさらに多くの企業で取り合う結果になった。こうなると中国メーカーは海外市場に活路を見出すくらいしか手がない。しかし,2005年7月の人民元の切り上げが重くのしかかる。中国メーカーを取り巻く環境は厳しくなるばかりだ。

 ジリ貧の中国メーカーから携帯電話機を開発できる技術者が離れ始め,開発力を失った中国メーカーはデザインハウスに設計を頼むしか方法がなくなってきた。中国メーカーの衰退とは対照的にTechfaith Holding社やLongcheer社などのデザインハウスが勢力を伸ばし始めている。