携帯電話機の生産台数が順調に増えている。2005年の台数は,どう少なく見積もっても7億台を下回ることはなさそうだ。“携帯バブル”とも呼ばれ,部品がことごとく不足した2000年の携帯電話機の生産台数が4億台だったことからすると,2005年の台数がいかに多いかが分かる。誰がこれほどの好景気を予測しただろうか。

台数が増えるのは大手5社のみ

 しかし,携帯電話機の生産台数が順調に増えているとはいえ,全てのメーカーの生産台数が増えているわけではない。というよりもトップ5社のみが好景気を享受しており,他のメーカーは厳しい状況が続いている(図)。2005年に携帯電話機の全世界の生産台数は約8000万台増える。一方,トップ5社の増加分を合計すると約9200万台と世界全体より1200万台ほど多い。つまり,6位以下の合計は,2005年に1200万台減のマイナス成長になる見込みだ。

図●携帯電話機の世界生産台数のメーカー・シェア年次推移(2004年実績,2005年予測)

 2000年の携帯バブルであれほど日本の半導体メーカーが潤ったにもかかわらず,2005年に日本の半導体メーカーの業績が芳しくない理由はこのあたりにある。すなわち,携帯電話機メーカー・トップ5社に半導体を供給していれば,その好景気を享受できたが,6位以下に供給していても業績は好転しない。日本の半導体メーカーは,日本の携帯電話機メーカーには強いが,携帯電話機メーカー・トップ5社にはなかなか入り込めないのが現状だ。

Nokiaの部品発注は3億台分とも

 上位5社の中でも特にトップのNokia社の伸びが大きい。日経マーケット・アクセスは,同社の2005年生産台数を2億3500万台と予測したが,これはNokia社の計画に比べて,かなり控えめな数字だ。同社の計画は2億5000万台,部品の発注ベースでは3億台と言われている。同社が計画通りに生産すれば,供給過剰から携帯電話機市場はさらに熾烈な価格競争に陥る。下位メーカーにとっては厳しい状況が続きそうだ。