CNT を用いたスキャホールドの作製方法は,CNTを脱イオン水中で超音波処理を行い,その分散液を吸引濾過して濾過膜に固定したものである。その作製した膜上に骨芽細胞様細胞(Saos2)を播種し,3日間と7日間培養をし,走査電子顕微鏡(SEM)によって細胞数計測を行っている。青木氏らでは,多層CNT(MWCNT)と単層CNT(SWCNT)を用いて,両者の細胞増殖の比較を行っている。
結果は,SWCNTを用いた場合に,より多く,より広い範囲に細胞が培養されたことが確認された(写真)。青木氏によれば,SWCNTの表面積が広いという特徴を直接に活かしているとのことである。また今回培養された細胞は,他の手法で培養したものより,比較的長さを持っており,神経系細胞など細くて長い細胞の培養にCNTは適している可能性があるのではということである。
また実際に応用段階に入った際には,CNTの毒性が問題になる。この問題に関して青木氏は,「もし毒性があれば細胞は死滅するはずであり,こんなに増殖しない」とコメントしている。CNTは様々な範囲で応用が期待されているが,この研究に関しては,CNTが元来持つ特徴である表面積の大きさを活かしたものであり,応用の可能性を強く感じさせるテーマである。今後の成果に期待したい。この研究の一部について青木氏は,第29回フラーレンナノチューブ総合シンポジウムのポスターセッションで紹介した。(紙西 大祐)
【写真】単層カーボンナノチューブをスキャフォールドに用いて増殖した骨芽細胞様細胞のSEM写真