三菱電機は,中国での昇降機事業の合弁相手である上海電気(集団)総公司との連携を強化すると,2005年8月9日に発表した。2006年に更改を控えていた合弁契約を更新すると共に,合弁会社の生産能力を増強する。従来,中国市場に関して三菱電機は普及価格帯の製品を中心に製造・販売していたが,性能や意匠に優れた高級品の需要が伸びていることから,市場の変化に合わせた生産体制を構築する。

 三菱電機と上海電気集団は,上海電梯有限公司(SMEC)と上海電梯工程技術有限公司(SMET)という二つの合弁会社を設立している。SMECでは現在,年間約1万8000台の普及価格帯の昇降機(エレベータやエスカレータなど)を製造。SMECブランドで販売している。一方のSMETでは,エレベータの主要部品である薄型巻き上げ機などを造っている。

 今回の合弁契約更新に伴い,三菱電機と上海電気集団は,SMETに対して合計100億円程度を増資。中国市場で需要が伸びつつある高級タイプの昇降機の生産ラインをSMETに新設する。「乗り心地や意匠などに関して,世界の中で最も要求が厳しいのは日本だが,その日本と同等の製品を欲しいという声が中国市場で聞かれるようになった」(三菱電機執行役副社長でビルシステム事業本部長の下村節宏氏)。SMETの製品は三菱ブランドで販売。「2ブランド戦略で,二極化する中国市場に対応する」(同氏)。

 三菱電機によれば,中国市場の昇降機需要は,2005年が12万3000台であるのに対し,2010年には15万台となる。2010年の15万台のうち,同社はその20%に相当する3万台の販売を目指す。そのうち約1万台がSMETの高級タイプ,残りの約2万台がSMEC製の普及タイプ。昇降機全体の約9割は,マンションやオフィスビル向けのエレベータが占めるという。

 SMECとSMETはそれぞれ開発機能も備えており,開発・設計技術者のほとんどは「現地採用」(三菱電機の下村氏)。部品に関しても,モータやレールといった核となる要素部品を含めて,現地調達が進んでいるという。性能に関しては前述の通り日本と同様のものが求められているため,生産技術も含めた最新の技術をマザー工場である稲沢製作所(愛知県稲沢市)から導入しているという。