図1 シンガポールIMEが開発したアンテナ内蔵型の極小無線タグ
図1 シンガポールIMEが開発したアンテナ内蔵型の極小無線タグ
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図2 拡大写真
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 シンガポールの研究機関IME(Institute of Microelectronics)は,1mm角より小さいアンテナ内蔵の無線タグ(RFIDタグ)を開発した。利用する通信周波数帯は2.45GHz,通信距離は最大2mmと日立製作所のアンテナ内蔵版ミューチップによく似ている。ただし,情報の書き換えやアンチコリジョン(輻輳制御)など現行のアンテナ内蔵版ミューチップにない機能も搭載した。「オン・チップ・アンテナ付きでしかも書き換え可能な2.45GHz帯無線タグは世界で初めて」(IME)という。

 IMEは,シンガポールの科学技術の総合研究機関 ASTAR(Agency for Science,Technology and Research)のエレクトロニクス部門である。これまで凸版印刷などと共同で一般的な非接触ICなどを開発してきた(Tech-On!の関連記事)が,今回は寸法がおよそ1mm×0.5mmのICの上に,後工程で渦状のアンテナを形成した無線タグを開発した。書き換え可能な128ビットの不揮発性メモリを備える。アンチコリジョン機能を持つため,複数の無線タグの情報を1台のリーダーで同時に読み取れる。

 ICにはデジタル/アナログの混載回路を集積した。0.13μmルールのCMOS技術で製造する。開発のポイントは「絶縁層をICの上に形成してアンテナと回路間の干渉を防いだ点」(IME)とする。アンテナは,Cuで形成した。ミューチップはAuでオン・チップ・アンテナを形成している。

 想定する用途は,衣服や紙,紙幣などへの埋め込みとやはりミューチップと重なるが,情報の書き換えが可能であることから「認証用に公文書などに埋め込んだ上で,閲覧者の履歴などをICタグに書き込んでいける」(IME)と新たな使い方も提案している。今後IMEは,現在開発中とする約5mm角のリーダー用ICを携帯電話機などへ組み込み,無線タグの用途を拡げていく,とする。