総務省の情報通信審議会は2005年7月29日に総会を開き,「地上デジタル放送の利活用の在り方と普及に向けて行政の果たすべき役割」についての第2次中間答申を了承した。答申では2011年の地上アナログ放送の停波まで6年と迫る状況を踏まえ,停波までに余裕をもって日本の全世帯が地上デジタル放送を受信できるようにする提案に力点を置いている。具体的には地上デジタル放送に対応した中継局の新設だけに頼るのではなく,FTTH(fiber to the home)の普及で広帯域化が進むIP(internet protocol)網や,衛星などを利用した再送信を提案している。

 IP網の利用については2006年内にもSDTVの画質による実証実験を始める。この実験により,放送地域を限定した形での送信ができるのか,画質などのサービス品質を維持できるのかといった基本的な検証を進める。これを踏まえて,2008年には地上デジタルHDTV放送の同時再送信をIP網で実現したい考えだ。衛星についても2005年8月から実証実験を始める。映像符号化方式には,現行の地上デジタル放送で利用されているMPEG-2よりも圧縮率の高いH.264/MPEG-4 AVCを利用する。この実験でも受信地域により放送内容を限定できるのか,電波の減衰が起こりやすい豪雪地域でサービス品質を保証できるのか,といった検証を進める。

コピー・ワンスの運用を見直す

 答申では,現在BS/地上デジタル放送のすべての番組に適用されている複製制御「コピー・ワンス」の運用にも触れた。コピー・ワンスでは映像のコピーを1世代のみ許可するため,映像コンテンツは別の媒体にダビングできず,元のコンテンツを消去して移動する「ムーブ」しか許されない(Tech-On!関連記事1Tech-On!関連記事2)。これに対して答申では,ユーザーの利便性を向上,または維持できるよう,著作権保護の運用を見直すよう提言している。2005年9月に検討の場を設け,年内に結論を出すように求めた。