コニカミノルタフォトイメージング(以下,コニカミノルタ)とソニーは2005年7月19日,レンズ交換式デジタル一眼レフ機の共同開発に合意した(ニュース・リリース)。両社は部品や技術を相互に利用して商品の競争力を高めることを狙う。コニカミノルタが提供する部品や技術には,CCDシフト方式の手ブレ補正機構や交換レンズ,ストロボなどの周辺機器,AF(自動焦点)/AE(自動露出)技術などがある。一方ソニー側はCCD/CMOS型撮像素子,Liイオン2次電池,高密度実装技術などを提供することを検討している。共同開発品はコニカミノルタが定めた交換レンズと本体の接続規格「Aマウント」を採用する予定だ。

 コニカミノルタは,自社の中級機を凌駕するかのような10万円のデジタル一眼レフ機を発表するなど市場で攻勢を強めているものの(Tech-On!関連記事),2004年12月時点の国内販売台数シェアは第5位の7%にすぎない。ユーザーが保有する交換レンズ資産という点でも条件は良くない。Aマウント品の累計出荷本数は1600万本。キヤノンのEFマウント品の「2500万本以上」(同社)に水をあけられている。

 それにもかかわらず,なぜ今ソニーはコニカミノルタと組んで一眼レフに参入するのか。背景は3つあると考えられる。

 第1は,コンパクト機などで激しく競う松下電器産業が,オリンパスと組んで2006年春にデジタル一眼レフ機を発表すること(Tech-On!関連記事日経エレクトロニクス関連記事)。オリンパス・松下連合が製品を発売するのは2006年夏ころとみられる。これを意識したかのようにコニカミノルタとソニーは,最初の共同開発品の発売を2006年夏に予定する。「開発期間は約1年しかないが,互いに技術を持ち寄って間に合わせる」(ソニー)。

 第2に,ソニーにとってコニカミノルタを選ぶことがごく自然だったこと。あるデジタル・カメラの開発経験者は次のように分析する。「キヤノンやニコンはソニーの参入を決して歓迎しない。オリンパスと組むと既に提携している松下電器産業を利するので避けたい。となると選択肢は(1)コニカミノルタもしくは(2)ペンタックスと組むこと,あるいは(3)独自にマウント規格を定めて交換レンズなどを整備するしかない。(3)はカネも時間もかかる。(1)と(2)で交流が深く,風土が似ているのは(1)のコニカミノルタの方だ」。なお,ペンタックスにデジタル一眼レフ機について他社と協力する予定はあるか確認したところ「現在公表できる話はない」とした。

 第3には,今後デジタル一眼レフ機においてレンズ資産の神通力が弱まる可能性があること。これはオリンパス・松下連合の主張でもある。デジタル一眼レフ機の2強,キヤノンとニコンが高いシェアを得ている背景には,ブランド力のほかに,銀塩方式の一眼レフ機に向けた交換レンズをデジタル機でも使いたいという要望に応えていることがある。しかし現在は「デジタル・カメラのコンパクト機からステップ・アップするユーザーがどんどん増えている」(複数のデジタル一眼レフ機メーカー)ほか,画素数の増加によって銀塩機用の交換レンズでは十分な解像力を得られなくなることもある。