[図1]試作したトリプルプレイの携帯端末。
[図1]試作したトリプルプレイの携帯端末。
[画像のクリックで拡大表示]
[図2]無線IPテレビ電話使用時の画面。
[図2]無線IPテレビ電話使用時の画面。
[画像のクリックで拡大表示]
[図3]AVプレーヤ使用時の画面。
[図3]AVプレーヤ使用時の画面。
[画像のクリックで拡大表示]
[図4]インターネット使用時の画面。
[図4]インターネット使用時の画面。
[画像のクリックで拡大表示]

 富士通研究所(本社川崎市)と富士通関西中部ネットテック(本社大阪市)は共同で,無線IP(Internet Protocol)テレビ電話,インターネット,AVプレーヤ/地上波デジタルテレビ放送(ただし,チューナは別途必要)に対応したトリプルプレイの携帯端末を試作し,2005年7月14~15日に東京国際フォーラムで開催する「富士通フォーラム 2005」の内覧会で報道陣に公開した(図1)。プロセッサに富士通の組み込み機器向けメディア処理プロセッサ「FR-V」(クロック周波数は400MHz)を搭載することで,動画表示の品質を携帯端末としては業界最高水準に高めたのが特徴。無線IPテレビ電話における動画の解像度はQVGA(320×240画素),同フレームレートは15フレーム/秒(全二重)となっている(図2)。一般的なCPUを使ったこれまでのものが,解像度でQCIF(176×144画素),フレームレートで7~8フレーム/秒だったことからすると,単位時間当たりの情報処理量は約4倍に向上した。

 このような高速処理が可能となったのは,FR-Vが「メディア処理を8並列で実行できるため」(富士通研究所ITS研究センター主任研究員の山田浩氏)。イメージとしては「メモリーから情報を取得し,演算して出力するという処理を,八つの画素で同時に実行できる」(同説明員)ためだ。同氏によれば,従来のCPUでも4並列のメディア処理までは対応できたが,そうした並列処理を行うプログラムをコンパイルするコンパイラが整備されていなかったため,実際のアプリケーションではそうした並列処理は利用されていなかったという。これに対し,FR-Vでは並列処理を行うプログラムを開発できるコンパイラが整備されている。そうした環境とFR-Vを利用することで,上記のような高速処理が可能となったという。FR-Vは,メディア処理に使う固定小数点演算を8並列で処理でき,ブラウザの処理に使う整数演算を2並列で処理できるようになっている。

 ちなみに,AVプレーヤ/地上波デジタルテレビ放送の動画表示では,解像度がVGA(640×480画素),フレームレートが15フレーム/秒(図3)。無線IPテレビ電話に対して解像度が高いのは,受信,すなわちデコードだけで済むためだ。無線IPテレビ電話の場合は,送受信の処理を行わなければならないため,エンコードとデコードが必要になる。搭載する表示パネルは,26万2144色表示可能なタッチパネル式の3.7インチ型TFT液晶タイプで,解像度はVGA。

 インターネット接続のための機能としては,富士通独自のフルブラウザ「Inspirium」を搭載。同ブラウザはトヨタ自動車の自動車向け情報サービス「G-BOOK」で採用されるなどの実績を持つ。画面の上下左右に緑色の三角マークが表示され,タッチパネル上でそれらのマークに触れるだけで表示個所を上下左右に移動できるようになっている(図4)。

 そのほか,無線IPビデオトランシーバの機能〔VGAで15フレーム/秒(半二重)〕や,CompactFlash/SDIO(Secure Digital Input/Output)/USBなどの外部インタフェースを持つ。CompactFlashのインタフェースを利用することで通常の電話の機能を付けることも可能としている。

 主な仕様は,外形寸法が165×73×26mm,質量がバッテリ込みで245g,バッテリは容量が1950mAh(定格電圧3.7V)のリチウムイオン2次電池,無線IPテレビ電話使用時の連続動作時間は約2時間となっている。搭載する撮像素子は35万画素のCMOSセンサ,無線LANモジュールはIEEE802.11b準拠,OSは「Red Hat Linux 2.4」,GUI環境は「X-Windows System」「WideStudio」。ミドルウエアは,動画用が「MPEG-4 codec」,オーディオ用が「AAC」,地上波デジタルテレビ放送用が「AVC/H.264 codec」。

 実用化に関しては「顧客のニーズとビジネスモデル次第。技術的にはほぼ完成している」(山田氏)という。そのほかの今後の課題は,軽量化。「現状ではバッテリが重い。いかに消費電力を下げていくかがポイントになる」(同氏)としている。