図1 NECエレクトロニクス 代表取締役社長の戸坂馨氏
図1 NECエレクトロニクス 代表取締役社長の戸坂馨氏
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図2 シリコンサイクルの底は2005年7月,その後の回復はもたつく
図2 シリコンサイクルの底は2005年7月,その後の回復はもたつく
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図3 世界シェア10%強の事業を強化
図3 世界シェア10%強の事業を強化
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 NECエレクトロニクスは,2005年度第1四半期(4月~6月)の業績見込みを下方修正した(ニュース・リリース)。同期の決算は2005年7月末にまとまる予定だが,売上高は前期(同年1月~3月)と比べて13%減の1450億円に落ち込む見通し。対前年同期比では28%もの減少となる。営業損益は100億円の赤字になるという。

 売上高が前期と比べて落ち込んだのは,汎用のマイクロコントローラや携帯電話機向けシステムLSIが,価格・販売数ともに減少したため。同社 代表取締役社長の戸坂馨氏は「シリコン・サイクルは,今ちょうど底を迎えたところ」として,第2四半期以降は売上高が向上すると見込む。ただし「今までのシリコン・サイクルの歴史からみて,本格的な成長カーブに乗るには数カ月~半年かかりそうだ」(戸坂氏)。

強い製品をさらに強く,海外展開にも注力

 NECエレクトロニクスは,今後の成長戦略として(1)世界シェア10%以上の製品の強化,(2)共通プラットフォーム構築によるASSP事業の拡大,の大きく二つを挙げた。(1)の対象となる製品はマイコンとLCDドライバである。マイコンは自動車向けで製品ラインアップを拡充する。これまでは「エンジン制御」用途で強みを発揮してきたが,今後はドアやワイパーなど「ボディ」用途でのマイコン搭載の増加が見込まれており,この分野での売り上げ倍増を目指す。汎用マイコンは,マスクROM内蔵からフラッシュ・メモリー内蔵への転換を,プロセス・回路技術の工夫でコストを上げずに実現する。マイコンに関するシェアの具体的な目標について戸坂氏は,明言を避けた。

 LCDドライバについては,特に携帯電話機向けの小型LCD対応で2005年以降,低下していたシェアの奪還を図る。2003年度第4四半期の時点で小型LCD対応の同社のシェアは約13%だったのが,2004年度第3四半期の時点で約7%に落ちていた。シェア低下の原因として「設計の標準化,自動化の遅れにより,製品ラインアップが手薄になったため」(同社)と分析している。ここへ来て高精細化LCD対応ではすでにデザイン・インが進んでおり,「今後のシェア増大は確実」(同社)という。

 (2)の共通プラットフォームは,携帯電話機,デジタルAV機器,車載情報システムなどの各用途でミドルウェアを共通化する「platformOViA」を活用する(Tech-On!関連記事)。ミドルウェアの約70%が共通化できるため,開発工数を30%以上削減できるとする。このプラットフォームを生かした携帯電話機向けのベースバンドLSIでは,GPRSの機能を新たに組み込み海外仕様に対応させることで,これまで国内仕様向けに頼っていた事業構造を変えていく。こうした海外展開の効果は「2007年度以降に表れてくる」(戸坂氏)と期待する。

 このほか,生産ラインの効率の指標であるOEE(overall equipment effectiveness)をこの半年で現状の50%から一気に70%~80%まで高めることを目指す。OEEとは,製造装置が良品チップの生産に寄与する時間の割合のこと。これにより生産ラインの稼働率の損益分岐点が,現行の80%から75%以下に引き下げられるという。同社の稼働率は「今が80%前後で底を迎えており,第2四半期にかけて上昇する」としており,稼働率の上昇と併せて利益を出せる体制を整備できると見込む。

営業利益率15%は次のサイクルのピーク時

 最後に,戸坂氏は同社の収益構造の改善イメージについて説明した。現状では業績全体のうち,売上原価69%,研究開発費15%,販売管理費11%,営業利益5%の比率である。目標ではこれを,売上原価60%,研究開発費15%,販売管理費10%,営業利益15%に改善していく。この営業利益率15%の実現時期については,これまで戸坂氏が社長就任以来明言してこなかったが,今回は「次のシリコン・サイクルのピーク時期近辺で達成したい」とコメントした。