図 正面左下に水タンクがある。1回5分の加熱水蒸気発生に約12mlの水を用いる。タンクには4回〜5回分の水が入る。
図 正面左下に水タンクがある。1回5分の加熱水蒸気発生に約12mlの水を用いる。タンクには4回〜5回分の水が入る。
[画像のクリックで拡大表示]

 日立ホーム&ライフソリューションは,過熱水蒸気の発生機構を持つオーブン・レンジ「MRO-AX10」とIH(電磁誘導加熱)方式の炊飯器「RZ-EX」シリーズを発売する(ニュース・リリース1ニュース・リリース2)。同社では,+100℃以上に加熱した過熱水蒸気を,その粒子の直径が約1.5nmであることにちなんで「ナノスチーム」と呼んでいる。具体的にはオーブン・レンジは+300℃,炊飯器は+130℃の水蒸気を生成している。同社のオーブン・レンジとIH式炊飯器の従来品には,水蒸気発生機構を搭載していなかった。シャープの「ヘルシオ」や松下電器産業の「高温スチームIHジャー炊飯器」など,既に水蒸気を利用した調理機器は数社から発売されている。日立ホーム&ライフソリューションは後発となるが,調理時間の短さなどをアピールして追い上げを図る。

 オーブン・レンジのMRO-AX10では,熱風循環式ヒーターの近くに水蒸気発生用のボイラーを設置している(図)。水は正面左下の水タンクから供給する。過熱水蒸気は,ボイラーで作った約+100℃の水蒸気を表面温度+750℃のヒーターで瞬時に加熱して生成する。この水蒸気は熱循環に使うファンにより,庫内に拡散させる。

 日立ホーム&ライフソリューションは,過熱水蒸気を活用するにあたり,従来品から備えている機能が役立つと主張する。1つは調理時間の短さだ。過熱水蒸気を使った調理では,一般のオーブンと同様に予熱に時間がかかることが課題となっていた。以前から,同社のオーブン・レンジは電子レンジと電気オーブンを同時に稼働することができる。調理に電子レンジを利用することで加熱時間を短縮するだけでなく,電気オーブンの予熱中に電子レンジを稼働させることによって全体の調理時間を短縮する。電気オーブンと電子レンジによる同時加熱,過熱水蒸気,ヒーター直火によるグリル機能を組み合わせることで,同製品の過熱水蒸気機能のみを使う場合に比べて約40%時間を短縮できる場合もあるという。

 もう1つは,加熱時間などを割り出すための食品の状態測定である。一般にターン・テーブルのないタイプのオーブン・レンジは赤外線温度センサを採用しているが,水蒸気がある場合は食品の温度が測定できなくなってしまう。同社では食品の状態を調べる主要センサとして質量センサを従来から採用しているため,水蒸気の有無にかかわらず食品の重さを測定し加熱時間を調整できるとしている。赤外線センサは補助に用いている。

 炊飯器のRZ-EXシリーズでは,蒸らしに過熱水蒸気を用いることで,甘みやつやを増やすことができるとする。炊飯の最後に蒸気を閉じ込め,側面上部のヒーターによりさらに加熱して,+130℃の過熱水蒸気を生成する。この製品は圧力炊飯方式を採用しており,内釜内の気圧を1.5気圧まで高められる調圧機構を持つ。過熱水蒸気発生の際にはこの調圧機構を用いて蒸気を閉じ込めている。