「白色LEDの実情と課題は・・・」,白色LEDセミナーで当事者が語る
白色発光ダイオード(LED)の発光効率の改善と明るさの向上がどんどん進んでいる。「蛍光灯を凌駕する100lm/W超の発光効率をいつ白色LEDは得るのか。照明機器や車載機器,液晶パネルなどへの応用を考えるとどのような課題があるのか」など,興味は尽きない。2005年6月24日に「日経エレクトロニクス」が主催で開催した技術セミナー「白色LED 2005 −高出力を得て,照明や車載に広がる」では,国内外のLEDメーカーが高出力な白色LEDの開発動向を,国内照明機器メーカーが白色LEDを使う照明機器の課題などを講演した(図1)。発表では「100lm/W超は早ければ2008年」という見通しや,現在開発中の高出力白色LEDに関する特徴の説明が聞かれた一方で,「白色LEDの電気特性のバラつきが深刻」,「白色LEDならではの機器がないと爆発的な普及は難しい」といった課題を挙げた講演も多かった。
「蛍光灯並み」は2008年か
講演したLEDメーカーの中で,発光効率100lm/Wの達成時期について最もアグレッシブな見通しを示したのがシチズン電子である。講演では,先日発表した発光効率70lm/Wで1パッケージ当たりの光束245lmと,共に世界最高の白色LEDの電気特性や回路構成を説明し,さらに発光効率のロードマップを見せた。それによると,投入電力1W級の白色LEDでは2008年の早い段階で110lm/Wを達成する。現段階で90lm/Wにまで高められる技術的な課題と解決方法は見えているという。70lm/Wの白色LEDは約0.3mm角の青色LEDチップを24個も使い,これに放熱性の高いパッケージを組み合わせて実現している(Tech-On!関連記事1)。
豊田合成は発光効率100lm/Wの到達時期を2008年末〜2009年初めというロードマップを見せた。同社は発光効率の改善と同時に,白色LEDの発光色の範囲を広げる必要があるとの考えを示した。そのために蛍光体材料を見直すことが必要であり,現在同社が開発中の「BOS(barium ortho-Silicate)」系の蛍光体材料が今後の白色LEDには適していると主張した。BOS系の蛍光体材料は,一般的な白色LEDで使うYAG系の蛍光体材料と比べ, LEDチップと組み合わせて得られる光の色範囲がCIE色度図で2倍以上も広い。青色LEDチップあるいは近紫外LEDチップと組み合わせても,BOS系蛍光体材料を効率よく励起できるという。YAG系の蛍光体材料は青色光によって効率よく励起できるが,近紫外光ではほとんど励起されない。
明るさにはメド,ただし電気特性バラつきの改善が課題
日亜化学工業は,白色LEDの発光効率100lm/W実現へのロードマップに触れ,さらに照明機器の光源として普及課題について述べた。白色LEDが照明機器に広く普及するには,大きく2つの課題があるとした。照明機器としての性能向上と,照明機器としての位置付けである。照明機器としての性能向上については,同社は発光効率向上のためにLEDチップのサファイア基板とGaN系化合物半導体の界面に凹凸をつけ,LEDチップからの光取り出し効率を高めるという方向で開発を進めている。さらに発光効率を上げるなどのLEDチップ自体の改良だけでなく,LEDの配列やLEDへの電流供給の効率化なども考慮し,光源システムとしての開発が不可避とした。そのためには機器メーカーなど周囲の協力が不可欠とした。
照明機器としての位置付けについては,「白色LEDが照明機器の光源となっても,蛍光灯や白熱電球など従来の光源はなくならない。小型で配列の自由度が高いなどといったLEDの個性を生かしたものが出るはず」(日亜化学工業 第二部門 事業企画本部 事業企画部 部長代理の大黒 弘樹氏)とし,LED業界や照明業界などと協力しながら取り組んでいく姿勢を強調した。
白色LEDを使った照明機器の位置付けや今後の課題に関しては,照明機器メーカーの立場から松下電工が講演した。白色LED照明について,手元を照らすものや,化粧用の携帯型手鏡に白色LEDを付けたものなどの同社の製品を例に挙げて現状を説明したが,未だ一部の照明でしか使われていないという。また,商品開発の成功談や失敗談などの裏話をして会場を沸かせていた。
今後の課題として松下電工は,白色LEDのさらなる高出力化と色温度や順方向電圧(VF)などの特性バラつきの改善,光束当たりのコスト低減を挙げた。高出力化に関しては,同社が発表したパッケージ1個当たりで得られる光束が250lmの白色LEDモジュール( Tech!On関連記事2,発表資料)を例に挙げ,実現の見通しはほぼついていると説明した。しかし,特性バラつきについては,「蛍光灯や白熱灯には特性バラつきがほとんどない。だからLEDの特性はバラつくものというLED業界の常識は照明業界には通用しない。今の特性バラつきでは照明器具として照明業界は認めないだろう」(同社 LED・特品・新市場開発センター LED事業推進部 事業企画チーム 主担当の大利 富夫氏)とした。
白色LEDのVFは現状では1Vもバラつくこともある。例えば照明機器に使うために白色LEDを6個直列につなぐ場合,VFが1Vもバラつくと,このバラつきによって生じる電力損失は全消費電力の36%にも達してしまうという。なお,光束当たりのコストについては,2010年には蛍光灯に近い水準に下がるという見通しを示した。
リアプロの光源も視野に,ヒート・シンクなしも可能に
現在開発中の高出力白色LEDやその応用例に関しては,ドイツOSRAM Opto Semiconductors GmbHや米Lumileds Lighting,LLCが発表した。OSRAM Opto社は,熱抵抗が4K/Wとかなり小さいLEDモジュール「OSTAR」を紹介した。このLEDモジュールの応用先として,前面投射型や背面投射型のプロジェクタに使う光源も有力な候補と位置付けた。OSTARは,セラミック基板上に1mm角の大型LEDチップ4個を設置し,さらにこのセラミック基板や個別部品をプリント配線基板に実装したもの。LEDチップを24個〜36個使うOSTARを背面投射型プロジェクタの光源に使うと,画面寸法が50インチ型までの大きさで画面輝度500cd/m2を得られるという。大量のLEDチップを実装するために,LEDチップを実装した前出のセラミック基板を複数個使うことを想定している。
各セラミック基板に配置する4個のLEDチップは,緑色LEDチップが2個,赤色LEDチップと青色LEDチップがそれぞれ1個になるという。なお,この光源と組み合わせる表示素子としてはDMDやLCOSといった反射型のパネルを想定する。
Lumileds社は,同社の最新の白色LEDモジュール「Luxeon K2」について説明した。特徴は,従来品「Luxeon I」に対し光出力を大幅に高めたことである。チップの改良により,同サイズのチップからの光出力を15%〜30%向上した。さらに,最大接合温度を135℃から185℃に高めたことで,最大光出力値(最大電流値)も向上した。
Luxeon K2を利用すれば,機器メーカーの使い勝手が大幅に向上するとLumiledsは説明する。例えば,Luxeon Iと同数のモジュールを利用すれば出力が増加するのはもちろんのこと,出力を同等にすれば使用するモジュール数が少なくて済むため,コスト削減が可能になる。例えば,7個のモジュールを使うと接合温度が150℃の状態で従来品が268lmだったのに対し,新型品では600lmに達する。さらに,ヒート・シンクを用いずに同等の出力を得るという使い方もできるとする。例えば,従来はヒート・シンク付きのプリント配線基板に7個の白色LEDを実装して268lmを得ていたのに対し,新型品ではヒート・シンクを使わずに1つ少ない6個の白色LEDで268lmを得られる。
「触っても熱くありません」
高出力白色LEDに関連する光源としては,日亜化学工業は半導体レーザを利用した白色光源( Tech!On参照記事3)について講演した。この白色光源はGaN系の青色や青紫色半導体レーザを光源とし,レーザの出射面に光ファイバの端面をつなぎ,蛍光体材料を塗布した他方の端面から半導体レーザから光を出射することにより,白色光を作り出している。
輝度は11cd/mm2に達し,数cd/mm2のハロゲンランプや10数cd/mm2のHIDランプと肩を並べる。そのため発光部の発熱を心配する声もあったが,「熱はありますが,全然我慢していません」(同社 第二部門 第一技術本部 LD第一技術部 部長代理の長浜 慎一氏)とし,実際に発光部を手に持ち,発熱量が少ないことを強調した(図2)。これは発熱する光源部と白色光を発する部分が光ファイバによって離れているためである。
今後は,発光部の形状に反射板構造を取り入れることで白色光にある程度の指向性を持たせ,輝度を高めるとする。この反射板構造を取り入れた品種を2005年末からサンプル出荷する予定である。













