図1 今回Intel社が試作したLSI
図1 今回Intel社が試作したLSI
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 米Intel Corp.は,パワー・アンプを内蔵した無線LAN送受信LSIを,設計ルール90nmの標準CMOS技術で試作した。2.4GHzのIEEE802.11b/g,5GHzの同11aに対応する。このほか,パワー・アンプの帯域幅を最大100MHzまで広げることで,40MHzほどの帯域幅を使うとみられる次世代無線LAN 「IEEE802.11n」にも対応可能という。2.4GHz帯と5GHz帯のいずれもダイレクト・コンバージョン方式を採用する。同社は今回の成果を「2005 Symposium on VLSI Circuits」で公開した(講演番号19-2)。

 Intel社は設計ルールを90nmまで縮小することで,送受信LSIの消費電力の半分を占めるデジタル回路の消費電力を引き下げた。デジタル回路は,主にアナログ信号の雑音の補償などに用いる。Intel社は,微細化で消費電力を抑えやすいデジタル回路の役割を増やし,アナログ回路の置き換えを進めることで,消費電力を持続的に低減させることを狙う。デジタル回路の動作電圧は+1.4V,アナログ回路の動作電圧は+3.3V。消費電力は受信時が170mW,送信時が800mWである。

 今回の回路はRFトランシーバ回路とパワー・アンプのほか,LNA,VCO,帯域通過フィルタ,VGA,ミキサなどを内蔵する。VCOの発振周波数は8GHzとした。発振周波数を5GHzとすると,5GHz帯で動作するパワー・アンプの信号を劣化させる恐れがあるためだ。VCOが出力する8GHz信号を分周器で4GHz,1GHzの信号に変換し,SSBミキサで合成して5GHzの周波数を得る。さらに5GHzの信号から分周器で2.4GHzの信号を得る。