スカパー・モバイルの山崎氏。「携帯電話機はユーザーの一番手元にあるメディア。携帯電話機からCS放送へのユーザー誘導も図れる」と携帯向けコンテンツ配信の意義を強調した。両手に持っている端末では,試験サービスしているスポーツとアニメの動画を映している
スカパー・モバイルの山崎氏。「携帯電話機はユーザーの一番手元にあるメディア。携帯電話機からCS放送へのユーザー誘導も図れる」と携帯向けコンテンツ配信の意義を強調した。両手に持っている端末では,試験サービスしているスポーツとアニメの動画を映している
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 スカイパーフェクト・コミュニケーションズ(スカパー)は,2005年秋にも携帯電話機に向けた動画コンテンツの配信事業を本格展開する。動画配信関連の技術を持つACCESSなど3社と資本提携し,事業を担当する子会社を6月1日付で設立した。スカパーがCS放送で提供しているコンテンツを加工して携帯電話機に配信するほか,携帯電話機向けの独自コンテンツも用意する。

 今回,設立した子会社は「スカパー・モバイル」である。資本金は4億8000万円で,スカパーが51%,ACCESSが34%を出資した。ストリーミング配信事業のJストリームと,携帯電話機に向けた電子番組表(EPG)事業を手掛けるナノ・メディアも,それぞれ10%,5%を出資している。今回のケータイ向け配信サービス以外に,パソコン向け映像配信サービスの決済手段としても利用できるようにすることで,3年~4年のうちに年間売上高を50億円規模に育てるのが目標だ。

CSの映像からダイジェストを編集

 サービス開始当初は,スカパーが得意とするスポーツなどの娯楽コンテンツを中心にコンテンツの品ぞろえを図る。たとえばスポーツ中継では,スカパーが放映しているCS放送向け中継番組の映像を基に,ハイライト・シーンを編集して2分半~5分程度と短時間のコンテンツを制作,配信する。映像コンテンツ以外にも,文字やゲームなどのコンテンツ配信も検討している。月額利用料はコンテンツにより異なるものの,100円~300円程度の水準を考えているという。

 スカパーは既に,携帯電話機に向けたスポーツとアニメーション番組の映像配信を,Jストリームと共同で試験的に実施中である。配信する映像の長さや品質の調整といったノウハウについて同社から支援を受けている。

 このサービスを使って映像を受信するには,携帯電話機にアプリケーション・ソフトウエアを組み込む必要がある。このアプリケーション・ソフトウエアは,本格サービスの展開に向けてACCESSやナノ・メディアと共同開発中である。アプリケーション・ソフトウエアの形式は,各携帯電話事業者の端末で使えるように複数のものを用意するもよう。

 サービス開始時期は,まだ決まっていない。しかし「コンテンツの品ぞろえ,配信インフラなどの状況が整い次第,順次始めたい。早くサービスを始めたいが,通信事業者との話し合いも必要になるため,秋くらいのサービス開始となるだろう」(スカパー・モバイル 代表取締役 社長の山崎宇充氏)としている。

「1セグとはコンテンツが異なる。競合しない」

 山崎氏は今回の事業戦略説明会で,同社のCS放送の契約者が335万世帯を超えたことに触れ「着実に顧客数を増やしている」と強調した。一方で「スカパーはCSのイメージが強いが,CS放送の視聴は有料であり,アンテナ設置も必要だ。今後苦しい時期も来るかもしれないと考えている」と述べた。同社は2年前からCS放送以外の手法によるコンテンツ配信を検討しており,既に光ファイバ網による映像配信を展開している。「今回の携帯電話機向け事業を足がかりに,放送・通信の融合という分野にアプローチしていく」とコメントした。

 なお,2005年度中に商用サービスが始まる予定の,1セグメントの地上デジタル放送については「携帯電話機で映像を見るという点については同様であり,差異化を図る必要はあると思う。しかし同一のコンテンツを放映するわけではないので,直接的に競合したり,事業展開に際し影響を受けたりといったことは考えていない」(山崎氏)との考えを示した。

事業戦略発表会では,スカパー・モバイルと出資各社のトップが顔をそろえた。左から,Jストリーム 代表取締役社長の白石清氏,ACCESS 代表取締役社長の荒川亨氏,スカパー・モバイル 代表取締役社長の山崎宇充氏,スカパー・モバイル 取締役の相沢達郎氏,ナノ・メディア 代表取締役社長の藤野千明氏
事業戦略発表会では,スカパー・モバイルと出資各社のトップが顔をそろえた。左から,Jストリーム 代表取締役社長の白石清氏,ACCESS 代表取締役社長の荒川亨氏,スカパー・モバイル 代表取締役社長の山崎宇充氏,スカパー・モバイル 取締役の相沢達郎氏,ナノ・メディア 代表取締役社長の藤野千明氏
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会場では,P2Pによるパソコン向け動画配信サービスのデモを展示していた。2005年秋に試験サービスを始める予定。今回のデモでは,符号化方式にH.323を採用,符号化データ速度は350kビット/秒としていた。配信に用いるソフトウエアには,ウタゴエが開発したものを用いている。
会場では,P2Pによるパソコン向け動画配信サービスのデモを展示していた。2005年秋に試験サービスを始める予定。今回のデモでは,符号化方式にH.323を採用,符号化データ速度は350kビット/秒としていた。配信に用いるソフトウエアには,ウタゴエが開発したものを用いている。
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