図1 今回のHMDを使った場合の視界の例
図1 今回のHMDを使った場合の視界の例
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図2 実際に装着した様子
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図3 映像の向こうが見える原理
図3 映像の向こうが見える原理
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図4 ディスプレイを下に置けば通常は見えなくなる
図4 ディスプレイを下に置けば通常は見えなくなる
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 常時着用でき,視界を邪魔せず必要なときだけ情報を表示する――こうした用途を目指すヘッド・マウント・ディスプレイ(HMD)をオリンパスが試作した。普段は映像を表示せず,駅のホームに着いたときに電車の到着時刻を知らせる,電子メールが着信したときに注意を促すなど,簡単な情報の表示に向ける(図1)。ユーザーには,50cm先に3.8型,対角10cm相当の半透明の画面があるように見えるという。実際に装着したところ(図2),表示が透けて見え,視界の妨げにはならず,ディスプレイの存在がほとんど気ならなかった。

 ディスプレイの本体は,大きさ3.2mm×3.2mm×27mmの棒状をしており,0.16インチ型で11.3万画素の液晶パネルを組み込んである。これをメガネに装着して使う。本体とメガネに取り付ける部分を合わせた重さは27gで長時間の装着に耐えられるとする。

 今回の試作品と同様にメガネに付けて使うHMDを既に米MicroOptical Corp.などが販売している(米MicroOptical社の製品紹介ページ)。これらと異なる点は,映像に覆われた先が見えることだとオリンパスは主張する。ディスプレイが小型なため,ユーザーの瞳孔の約半分の面積を覆うに過ぎず,ディスプレイの後ろに隠れた外界からの光は,瞳孔のうちディスプレイが覆っていない部分から目に入る(図3)。

 オリンパスは,このディスプレイをメガネのレンズ下の位置に取り付けて使うことを想定している。こうすると視線を正面に向けたときにはディスプレイは見えず,目を下に向けたときだけ見えるようになるため,さらに表示が気にならなくなる(図4)。

 試作品は,ケーブルでつないだパソコンの情報を表示している。手軽に常時着用できるように,情報を無線で送受信することを検討中という。「HMDの光学系の基本原理はほぼ完成している。問題は無線通信により消費電力が増すこと。ただし,動画を伝送せず,時折必要な情報を表示だけにすれば,省電力化が可能」(オリンパス 未来創造研究所 井場 陽一氏)とした。例えば表示素子に有機ELパネルを使い,1時間に10回,1回に5秒程度情報を表示すると考えれば, HMD全体の消費電力は平均数mWになるという。