据置型VTRにテレビ番組を録画したユーザーの4割は律儀にCMを視聴する。一方でハード・ディスク装置(HDD)レコーダに録画したユーザーは,6割近くが「80%以上のCMをスキップする」---。こんな実態が,野村総合研究所(NRI)の調査でわかった(発表資料)。

 VTRユーザーの44.1%は「CMスキップをしない」と回答した。「80%以上100%未満のCMをスキップする」「全てのCMをスキップする」と答えたのは合計で37.3%にとどまった。これがHDDレコーダになると状況が一変する。「スキップしない」というユーザーは23.1%に減少する。逆に「80%以上100%未満スキップ」が33%,「全てスキップ」が23.4%で,合わせて全体の3分の2に上るユーザーが,再生時にほとんどCMを観ていないことになる。

 HDD内蔵型DVDレコーダの普及や,将来的なビデオ・サーバの市場形成に伴い,民放各局のCMによる広告収入モデルが見直しを迫られるとの意見が以前からあった。これについてNRIでは,「平均CMスキップ率(64.3%),HDDに録画した番組を試聴する割合(34.2%),HDDレコーダの世帯普及率(15.2%)などから試算すると,2005年はテレビCM市場の約2.6%,金額にして約540億円の価値が失われることになる」とみている。同社では2009年にHDDレコーダの世帯普及率が44.3%に達すると予想しており,CMスキップの影響が今後さらに拡大すると指摘する。

 調査では,VTRユーザーとHDDレコーダのユーザーのそれぞれに,「録画した番組を試聴する際のCMスキップ率」を尋ねた。サンプル数はそれぞれ1967,637。

録画した番組を試聴する際のCMスキップ率(図:NRIのデータを基に本誌が作成)
録画した番組を試聴する際のCMスキップ率(図:NRIのデータを基に本誌が作成)
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