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<第54回 高分子学会年次大会報告12>東京医科歯科大,ナノゲル-無機ハイブリッドを創製

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2005/05/31 00:00
佐藤 銀平
出典:日経ナノテクノロジー, (記事は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)
 東京医科歯科大学 生体材料工学研究所 有機材料分野 教授の秋吉 一成氏らのグループは,ナノゲルとリン酸カルシウムを複合化させることにより,新しい有機-無機ハイブリッドナノ粒子の作製に成功した。研究成果について,博士研究員(PD) の菅原 彩絵氏が横浜で開かれた高分子学会 第54回年次大会で発表した。このハイブリッドナノ粒子は,ナノゲル内の物質の放出制御によるドラッグデリバリーや骨欠損部位の修復など,幅広い応用が期待されるものである。

 ナノゲルを形成させる疎水化多糖には,プルランにコレステリル基を100単糖当たり1.4個導入したコレステロール置換プルラン(CHP:Cholesterol-bearing Pullulan)を用いた。CHPは, 水中で自己組織化によってできる粒径20〜30nmのナノ粒子であり,ドラッグ・デリバリー・システム(DDS)のキャリアとして注目されている機能性ナノゲルである。また,CHPは分子シャペロン機能を持ち,分子集合によりリポソームの表面コートする機能も持っている。

今回の実験では,CHPナノゲルの存在下(ナノゲル濃度:グルコース単位で3mM)でリン酸カルシウム(脊椎動物の骨や歯の主成分)の形成を行った。リン酸カルシウムは,ヒドロキシアパタイト(HAp:Hydroxyapatite) 粉末を弱酸性条件で溶解させた後,溶液のpHを上昇させることにより形成させた(図)。

 この実験によって得られた粒子の構造解析は,透過型電子顕微鏡(TEM)による観察,赤外線(IR) 吸収スペクトル測定などによって行われた。TEM 観察の結果,CHP ナノゲル非存在下ではプレート状結晶の凝集体が得られたが, この結晶は電子回折分析によるとHAp粒子であるという。一方,CHPやプルラン存在下では, 粒径500nm程度のHAp粒子が形成され, また分散したアモルファスリン酸カルシウム(ACP) ナノ粒子も観察されたという。なお,このACPナノ粒子は平均粒径が30nm程度であったということだ。

一方,ナノゲルを表面コートしたリポソーム-リン酸カルシウムのハイブリッドがある。このナノゲルをコートしたリポソームの粒径は200nmで,HApを溶解させた溶液中に混入し,25℃で8時間後,TEM(透過電子顕微鏡)観察を行った。その結果,ナノゲルをコートしたリポソームは,リン酸カルシウム形成のためのテンプレートとして機能することが分かった。

 今回の実験から,ナノゲル-ACPハイブリッドとナノゲルをコートしたリポソーム-ACPハイブリッドが得られたが,ドラッグデリバリーシステムのための新規なナノハイブリッド物質として大きな可能性を示したものである。(佐藤 銀平)

【写真】質疑応答に応える東京医科歯科大学 博士研究員の菅原 彩絵氏(日本学術振興会 特別研究員を兼務)
【写真】質疑応答に応える東京医科歯科大学 博士研究員の菅原 彩絵氏(日本学術振興会 特別研究員を兼務)

【図】ナノゲル-無機ハイブリッド粒子の構造
【図】ナノゲル-無機ハイブリッド粒子の構造