京都大学 大学院 工学研究科 高分子化学専攻 中條研究室の産学官連携研究員である岩村 武氏(写真1),共同研究者の足立 馨氏,中條 善樹氏らのグループは,2005年5月27日,横浜市で開かれた高分子学会 第54回年次大会において,「マイクロ波加熱ゾル-ゲル反応における反応条件の粒径に及ぼす影響」と題してマイクロ波加熱を活用したシリカ粒子の新しい合成研究の内容をポスターで紹介した。マイクロ波照射時間が長いほど,またTMOS(テトラメトキシシラン)の濃度が高いほど,得られるシリカ粒子の粒径は大きくなると言う。

 マイクロ波は,波長30cm~0.3mm,周波数1GHz~1THzの電磁波。マイクロ波加熱は,マイクロ波によって発生する分子内での双極子の回転,振動による内部発熱のことである。熱伝導による一般的な加熱とは原理が大きく異なる。マイクロ波を加熱に用いると,物質を内部から加熱したり,選択的に加熱することができる。この加熱法を利用した実用的な製品の代表例が電子レンジである。

 岩村氏のグループは,これまでにジグリム〔Diglyme:bis(2-methoxyethyl)ether〕中でのアルコキシシランのゾル-ゲル反応にマイクロ波による加熱を適用し,わずか2,3分間のマイクロ波照射で,粒径の揃ったサブミクロンサイズの球状コロイダルシリカを得たことを報告していた。今回の発表では,マイクロ波の照射時間や溶媒等,種々の合成条件を変えて,得られるコロイダルシリカの形状と粒径への影響を調査した。

 まず岩村氏らは,マイクロ波の照射時間を60秒から210秒まで変化させてコロイダルシリカの合成を行った。その結果,マイクロ波を2分間以上照射すると溶液に白色沈殿起こり,コロイダルシリカの生成を確認することができた。

 SEM(走査電子顕微鏡)で観察したところ,全ての時間において得られた沈殿は球形で,粒径が揃っていることを確認した。また,マイクロ波照射時間が長いほど,得られるシリカ粒子の粒径が大きく(写真2),TMOSの濃度が高いほど,得られるシリカ粒子の粒径が大きいことも確認された。この技術は,化粧品開発やポリマー充填剤の生成に期待できると言う。

 岩村氏らは今回の結果を受け,有機-無機ハイブリッド微粒子の合成も行っている。マイクロ波加熱ゾル-ゲル反応を利用した複合材料の合成は,これまでとは全く違う新しい材料の開発につながる可能性が有り,今後の展開に大いに期待できる。(久米 洋平)

【写真1】ポスター前で発表を行う京都大学の岩村 武氏
【写真1】ポスター前で発表を行う京都大学の岩村 武氏

【写真2】マイクロ波照射時間による粒径の比較
【写真2】マイクロ波照射時間による粒径の比較