JEITA会長の岡村正氏(東芝 取締役 代表執行役社長)

 「次世代DVDについては,消費者の立場から見て最も良い規格を作ることが,JEITAとして最大のミッションと考えている」。東芝の取締役 代表執行役社長である岡村正氏は,電子情報技術産業協会(JEITA)が開催した同氏のJEITA会長就任会見の場で,こう話した。

 新会長就任の記者会見そのものは,岡村氏の挨拶に始まって質疑応答に終わるまで終始,和やかなムードだったが,会見が終わるや,十数名の記者が岡村氏を取り囲んだ。記者たちが聞き出したいのは,次世代光ディスクの規格の統一について。2005年4月に,「Blu-ray Disc」と「HD DVD」の統一交渉が進んでいると報道されて以来,ソニーや松下電器産業,東芝など,それぞれの陣営からコメントが発表されてきた(Tech-On!関連記事1同2同3)。交渉は難航しているだけに,HD DVD陣営の代表格である東芝 岡村氏の発言にも注目が集まっている。就任会見中も「次世代DVD規格統一についてどう考えるか」との質問があったが,岡村氏は「JEITA会長としては答えにくい」として,冒頭のように話すにとどまった。

 会見後に会場の片隅で同じ質問を受けた岡村氏は,「早期の統一が望ましいことは間違いないが,安易に妥協していいものでもない。規格の内容は,企業のエゴで決めるべきではない。消費者の意見を吸い上げて,消費者にとって良い規格にしたい」と話した。同氏は前日の日本経団連の記念パーティーに引き続き,短いやりとりの中で,「消費者のため」という言葉を何度も繰り返した。

JEITA新会長としての岡村氏,「中国との絆は弱くならない」

 JEITAの新会長として,岡村氏は会見の中で,(1)情報化投資の拡大,(2)地上デジタル放送の普及促進,(3)環境問題への取り組みを2005年度の課題に挙げ,「今後の国際情勢は楽観できないが,業界の課題に真摯に取り組んでいきたい」と抱負を語った。反日感情の高まりが懸念される中国については,「厳しい政治環境ではあるが,JEITA会員各位の活動に大きな影響が出ているとは認識していない。中国との経済的な絆は,強くなることはあっても弱くはならない」と述べた。JEITA会長の任期は1年。前任の安藤国威氏(ソニー 取締役 代表執行役 社長)の任期満了に伴って,岡村氏が就任した。