ユニデンは2005年5月26日,新たな生産拠点としてフィリピンを正式に選んだとTech-On!の取材で明らかにした。現状の中国における一極集中生産では,製品の安定供給に対して大きなリスク(チャイナリスク)を抱えることなどを危惧し,同社は生産拠点の分散化を検討していた。フィリピンの現地工場ではコードレス電話機を生産する計画。2005年7月から試作ラインを稼働させ,同年8月には15万台程度,同年9月からは45万~50万台の量産を開始する予定。


 2005年4月18日,同社のシンセンの現地工場である「友利電電子(シンセン)有限公司」で,いわゆる「反日デモ」に乗じた従業員による大規模なストが発生。この影響で工場の操業が3日間連続で止まり,コードレス電話機などの生産がストップした(関連記事)。この時期は比較的生産量が少なかったため,操業停止分は工場が稼働を再開した後の増産で補い,顧客への影響を回避したという。ところが,「もしも需要期にストなどが起これば,当社は致命的な損失を被る」(同社)と危機感を持った同社は,中国以外の国に現地工場を設立する決定を急いでいた。


 フィリピンの現地工場は,同社が中国に生産拠点を移転する前のもの。つまり,従来の工場に生産の一部を戻す形となる。


 フィリピンに現地工場を設ける理由として,同社は中国の国民に根強い「反日感情」を元にした生産停止などのチャイナリスクのほかに,新たな生産能力の確保も挙げる。現在,中国現地工場は「フル稼働もフル稼働。全く余力がない状況」(同社)。そのため,フィリピンに現地工場を持つことで,同社は既存の製品の生産能力を増強するとともに,新しい種類の製品を造る余裕を得る狙い。


 一方,中国現地工場の生産能力は現状よりも削減する。ユニデンは今回のストを受けて,法令を徹底して遵守することを決定。「シンセンの法令に基づき,今後は1月当たりの残業時間の上限である36時間を厳守する」(同社)。同社の現地工場ではこれまで「作業員が望むだけの時間を働いてもらっていた」(同社)。現状ではシンセンにおいてこの残業時間の上限を守っている日系メーカーはなく,「当社が法令が定める残業時間を遵守する最初の日系メーカーになる」とユニデンは言う。つまり,中国現地工場は残業時間が従来よりも減ることで,生産能力が下がる見込み。