縦6cm×横4cm×厚さ1.5cm,重さは50グラム
縦6cm×横4cm×厚さ1.5cm,重さは50グラム
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無線チップやマイコンチップを一円玉サイズの基板に収納
無線チップやマイコンチップを一円玉サイズの基板に収納
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 日立製作所は,装着した人の脈拍や動き,体温などを測定し,そのデータを無線で送信できる腕時計型端末を開発した。同端末と情報をやり取りする専用基地局をインターネットに接続することで,端末を装着している人の身体の状態を遠隔地から継続的に把握できる。高齢者向けのヘルス・ケア・サービスなどに向け,3年以内の製品化を目指す。

 今回日立は,縦6cm×横4cm×厚さ1.5cmの腕時計としては少し大型のケースに,加速度と脈拍,温度を検知する3つのセンサのほか,無線通信モジュール,小型液晶パネル,電池などを組み込んだ。「個々の回路の構成を工夫して部品点数を減らすことで,これだけ多くの機能を腕時計サイズに収められた。性能の面でまだ課題は残るが,必要な機能がこのサイズにきちんと収まることを実証した点に意味があると考えている」(同社 基礎研究所 人間・情報システムラボ長の矢野和男氏)。重さは全体で50gと軽い。消費電力は待機時が約3μW,駆動時が約60mWである。例えば1時間に1回脈拍を計測する場合,内蔵電池だけで1カ月にわたって使える。ただ,それでもまだ動作期間が短いので,現在は補助電池を外付けしている。これを使うことで半年間の連続動作が可能になったという。

 脈拍センサは,血中のヘモグロビンが赤外線を吸収する性質を利用したもの。光源の赤外LEDから放出し,体内で反射して戻った赤外光をフォトダイオードで電流に変換する。脈を打つと瞬間的な血流量が変化するため,赤外光の反射率が変化して電流値も変わる。これを検出し,脈拍とする。この測定方式自体はよく使われている。しかし今回は,少ない光量で脈拍を正確に測定すべく,赤外LEDとフォトダイオードの配置を調整して受光効率を高めたという。フォトダイオードが出力する信号の処理回路も見直し,信号に混ざる雑音成分を抑制した。これらの工夫によって赤外LEDの駆動電流を従来に比べて低減でき,脈拍センサの消費電力を今後数年で実用化が見込めるレベルにまで削減することができた。

 なお,今回の腕時計型端末に採用した無線通信方式は,現行のBluetoothなどに比べて消費電力やコスト当たりの情報処理量で有利といわれるIEEE802.15.4である。今後,より上位の規格である「ZigBee」に対応させることも検討しているという。基地局との通信距離は最大で約30mである。