公正取引委員会は「規格の標準化に伴うパテント・プールの形成等に関する独占禁止法上の考え方」と題したガイドラインの原案を作成,パブリック・コメントの募集を始めた(原案)。標準規格の特許プールに関して独占禁止法上で問題になる点を公正取引委員会が整理することで,円滑なライセンスの体系作りや運営につなげたい考え。2005年6月15日までに意見を集約し,6月末に正式版を公開する予定。正式版は今後,独占禁止法を運営する上での指針となる。なお今回の原案で示した判断基準は,日本にとどまらず,米司法省や米連邦取引委員会(FTC),欧州委員会などともおおむね意見調整を行ったものという。

 例えば標準規格に関する最近の話題では次世代光ディスクがある。現在「Blu-ray Disc」陣営のソニーと松下電器産業と「HD DVD」陣営の東芝が規格統一に向けてギリギリの交渉を続けている(Tech-On!関連記事1同関連記事2)。しかし,規格統一が成っても,分裂に終わっても特許ライセンスに関しては複雑な問題が残りそうだ(日経エレクトロニクス関連記事)。公正取引委員会では,今回のガイドラインは「次世代光ディスクの特許ライセンスの仕組みを作る上でも参考してもらえる」と期待している。

 今回のガイドラインのポイントは主に3つある。(1)どういう特許プールなら作ってよいか,(2)規格策定に関与しながら,後にライセンスを拒否する企業の出現をどのように食い止めるか,(3)特許プールの参加に際して企業にどのような制限なら課してもよいのか,である。指針の一例を示すと以下の通り。

 (1)については,プールに含まれる特許が,規格を具現化する上で必須の特許の場合は独占禁止法上で問題にならないとしている。必須特許か否かの判断は,特許プールに参加する事業者から独立した第3者が行う必要がある。(2)では,標準化活動に参加し,自社の特許が規格に含まれるように積極的に働きかけていた特許権者が,規格策定後にライセンスを合理的な理由なく拒絶することは独占禁止法で問題になると示している。(3)は,規格策定の初期段階において,必須特許をライセンスすることを条件に,策定活動に参加することを許可するといった制約を課すことは独占禁止法上で直ちに問題にならならないとしている。