伊藤氏。「設備投資は毎年継続的に実施する。2005年度は800億円を投じる」
伊藤氏。「設備投資は毎年継続的に実施する。2005年度は800億円を投じる」
[画像のクリックで拡大表示]

 ルネサス テクノロジは,2004年度(2004年4月~2005年3月)の連結業績の概要を明らかにした。売上高は1兆24億円(対前年度比2%増),営業利益は510億円(同14%増),税引前利益は324億円(同218%増),純利益は199億円(同131%増)と増収増益だが,期初予想(売上高は1兆900億円,営業利益は600億円)に対しては未達に終わった。なお,同社は非上場のため,上場企業の会計基準に準拠した詳細な業績は公表していない。

「1Gビット・フラッシュの量産開始が半年遅れた」

 同社の主力製品であるマイクロコントローラを含む「汎用製品事業」は営業黒字を計上したが,専用品を扱う「システムソリューション事業」と「メモリ事業」が営業赤字となった。携帯電話機向けの液晶ドライバICやアプリケーション・プロセサについて,高付加価値品へのシフトが思ったようには進まず,同社予想を下回ったという。下半期に入り,複数の顧客から受注のキャンセルがあったもようだ。

 フラッシュEEPROMについても,「AG-AND型を採用した1Gビット品の歩留まりが想定より低く,量産開始を半年遅らせざるを得なかった」(同社 代表取締役社長&CEOの伊藤達氏)という問題があった。このため,出荷数量が当初見込みを下回ったという。単価についても「2004年度の1年間でほぼ半額に下がった」(伊藤氏)。

 こうした業績悪化要因は,2005年度も基本的には続くと判断している。「以前は半導体市況の下降局面が2006年度に来ると予測していたが,これが1年前倒しになったと認識している。足元の状況は非常に厳しい」(伊藤氏)。製造コストの低減といった努力は続けるものの,2005年度の連結業績見通しは減収減益を見込む。売上高は9700億円(同3%減),営業利益は200億円(同61%減)とする。

90nmルールでのフラッシュ量産,下半期に開始へ

 同社が金額ベースで世界シェアの2割強を握るマイコンについては,フラッシュEEPROM内蔵品などの高付加価値品を拡販することで,安定した収益につなげる。併せて,「携帯電話機向け液晶パネルのSTN方式からTFT方式への移行は,2005年度には韓国や欧州でも確実に進む」(伊藤氏)として,液晶ドライバICの事業拡大を目指す。フラッシュEEPROMについては,2005年度下半期をメドに4Gビット品の量産を始める予定だ。「AG-AND型で初めての製品だった1Gビット品では量産開始に苦労したが,その経験を生かせるので,4Gビット品の量産は問題なく立ち上がると考えている」(伊藤氏)。

 2005年度の設備投資は約800億円。このうち約300億円を,直径300mmのウエハーを用いた半導体の生産体制拡充に用いる。同社では那珂第二工場の「N3棟」で300mmウエハーを用いて半導体を量産している。現在はN3棟の2階部分(1万2000m3)を,130nmルールのフラッシュEEPROMとSoC(system on a chip)の生産に充てている。N3棟への追加投資により,現在は未使用の1階部分(1万2000m3)へ設備を入れる。併せて,2005年度下半期をメドに90nmルールでのフラッシュEEPROMの生産を始める。これによりN3棟の300mmウエハーの処理枚数を,月間1万4000枚に引き上げる。2006年度上半期にはSoCで90nmルールを採用,2006年度下半期にはフラッシュEEPROM向けに65nmルールでの量産を始める計画だ。

■国内企業の最新の決算はこちらからご覧いただけます。