次世代の高速版BluetoothはUWB(ultra wideband)技術を採用したものになる。現行のBluetooth規格では,物理層に周波数ホッピング方式のスペクトラム拡散技術を用いている。この物理層の伝送技術として将来,UWBを採用する方針をBluetoothの標準化団体である米Bluetooth Special Interest Group(Bluetooth SIG)が明らかにした(発表資料その1)。

 Bluetooth規格は,物理層やMAC層,そしてさらに上位のアプリケーション層までを規定している。Bluetooth SIGの関係者は以前から,UWBを将来の物理層として使う可能性について言及していた。Bluetooth SIGは,「Bluetoothは携帯電話機に数多く搭載され,認証プログラムも整備されている。これとUWBが組み合わされば,携帯機器の高速無線通信に向けた最適なインタフェースが実現できる」と期待しているという。

 2004年11月にBluetooth SIGは,センサ・ネットワーク端末への適用を狙った低消費電力化や長距離伝送など,今後の取り組みについて発表している(日経エレクトロニクス関連記事)。しかし,高速化については,10Mビット/秒にする計画があったものの,無線LANなどとの競合が一層激しくなる中で実現の方向性が見えにくくなっていた。

電波干渉や周波数帯の確保が課題に

 Bluetooth SIGはBluetoothとUWB技術の採用に関する詳細や,仕様の確定時期をまだ公開していない。しかし,狙っている用途の1つは携帯端末間における映像データ伝送だという。

 高速版の機器が登場しても,現行版の端末とも接続できるようにするようだ。課題としては,同じUWB技術を用いるWireless USBや,広域無線アクセス技術の「WiMAX」,携帯電話などとの電波干渉の解決や,全世界に通用するUWBの周波数帯を確保することなどだという。

 UWB技術の関連では現在,仕様策定団体が2つに割れている。米UWB Forum, Inc.と米WiMedia Allianceである。しかし今回のBluetooth SIGの発表資料の中には,両方の陣営の代表のコメントが入っている。現時点でBluetooth SIGは,どちらの陣営の技術を用いるかは選んでいないとする。UWB技術をめぐる2つの陣営も,それぞれBluetooth SIGの動きを歓迎する内容の発表を行っている(UWB Forumの発表資料),(WiMedia AllinaceのPDF形式発表資料)。現在,米国ラスベガスで開催中の展示会「Networld+Interop」の会期中にUWB Forumは会議を開き「既にUWB技術と将来のBluetooth搭載製品の互換性を実現するための活動を開始した」と宣言している。