ソニーは,「NAB2005」のAVC Allianceのブースで,携帯機器などに向けた日本の地上デジタル放送,いわゆる1セグメント放送向けのシステムを出展した。同社が見せたのは,次のような実演である。まずパソコンのソフトウエアで映像データをH.264/MPEG-4 AVC(以下,H.264)方式で高能率符号化する。これをOFDM変調して送出,受信した信号を2種類の端末で復号化した。ただし今回は無線による信号送出は行わず,ケーブルを利用した。OFDM変調器は営電製のもの。「小型で持ち歩ける変調器は同機種だけ。しかも3台しかないものを今回の出展用に借りてきた」という。

 1セグメント放送の利用を想定して,符号化処理はベースライン・プロファイル(level 1.2)を採用,受信端末の1つである小型パソコン「VAIO typeU」上に表示する画面のアスペクト比は16対9(320画素×180画素)とした。出展品の表示フレーム数は15フレーム/秒で,データ伝送レートは192kビット/秒である。伝送レートは,放送事業者の意向によって変えられるようにしてある。実際には,各放送事業者も,もっと低い伝送レートを求めているようだ。

 会場に出展した,もう1種類の携帯型情報機器(PDA)型の端末は,ITS世界会議向けに開発したもので,商品化の計画はないとする。

符号化/復号化ソフトウエアは自社開発

 H.264の符号化および復号化ソフトウエアは,自社開発したもの。H.264は,日本における1セグメント放送だけでなく海外でも放送用に使われるほか,次世代光ディスクへの保存やなど幅広い用途で採用されている。このため,自社開発にこだわることにした。AVC Allianceのブースでは,ソニー・コンピュータエンタテインメントのプレイステーション・ポータブル(PSP)が「H.264を載せた,世界初の商用端末」として紹介されていた。PSPでは専用LSIを搭載しているが,今回出展した復号化ソフトウエアとは共通のものだという。

H.264復号化ソフトウエアを載せた「VAIO typeU」
H.264復号化ソフトウエアを載せた「VAIO typeU」
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「ITS世界会議」に出展したPDA型情報端末
「ITS世界会議」に出展したPDA型情報端末
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PSPは「世界初のH.264搭載端末」
PSPは「世界初のH.264搭載端末」
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