NTTサイバースペース研究所は,1080pのHDTV信号をオフライン(非リアルタイム)処理ながら符号化データ速度が1.8Mビット/秒になるまで圧縮できるH.264(MPEG-4 AVC)符号化技術を開発,「NAB2005」で披露した。圧縮するのに時間はかかるものの,1.8Mビット/秒と低い水準に抑えた符号化データ速度は間違いなく世界最高水準。画質については「符号化データ速度が10~20Mビット/秒のMPEG-2と同等」(同研究所)とする。

 同研究所では,H.264 符号化/復号化(コーデック)技術に関して,用途別に複数の開発を進めている。このうち1.8Mビット/秒まで圧縮できる「H.264オフライン符号化最適化技術」は,膨大な量の映像を蓄積することを目的とし,高い圧縮率における画質を追求したものだ。同研究所が開発した手法は,オリジナルのHDTV信号を圧縮する際,符号化モード量子化特性などの符号化パラメータに注目し,最適なパラメータを見つけては繰り返し圧縮するというもの。このパラメータの選定と圧縮の繰り返しを数十回繰り返すことにより,圧縮率を上げていく。

 同方式の難点は圧縮処理に時間がかかることだ。現状ではパソコン上で動作するソフトウエアで処理しているが,1.8Mビット/秒にまで圧縮するには本来の映像時間の約1万倍の時間が必要だという。

リアルタイム性重視型も開発

 このほか,リアルタイム性にこだわって開発したのが「超低遅延H.264イントラコーデック」。通常の圧縮では,フレーム間の差分情報を基に圧縮するところを,同技術ではフレーム内だけの情報で圧縮する。これにより遅延時間は,送受信合わせて66msまで小さくできる。リアルタイム性を重視するテレビ会議などへの利用を見込む。音声通話において,多くの人が認識する遅延時間の目安は150msとされる。これよりも短くできることを実証した。

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ITU/ISOによる基準映像(JM=Joint Model,左)と比較し,圧縮率は1.5倍で画質がほぼ同等であることを示したもの。
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MPEG-2による圧縮映像(左)と比較し,圧縮率でも画質でも勝ることを示したもの
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