PRO/Wireless 5116の採用を表明した機器メーカーや通信事業者の例(図:Intel社)
PRO/Wireless 5116の採用を表明した機器メーカーや通信事業者の例(図:Intel社)
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PRO/Wireless 5116に集積した主要回路(図:Intel社)
PRO/Wireless 5116に集積した主要回路(図:Intel社)
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当初,WiMAXは固定通信向けだが,現在は移動体を含めた広域無線サービスを可能にする後継規格の標準化が進んでいる。(図:Intel社)
当初,WiMAXは固定通信向けだが,現在は移動体を含めた広域無線サービスを可能にする後継規格の標準化が進んでいる。(図:Intel社)
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 米Intel Corp.が広域無線アクセス規格「WiMAX」対応のベースバンド/MAC処理LSI「PRO/Wireless 5116」を発表したことを受けて,日本法人のインテルはWiMAXの市場動向に関する記者説明会を2005年4月19日に東京都内で開催した。現在,世界各地の通信事業者がWiMAXを使った無線インターネット・サービスの導入を検討しており,その数は75社にのぼるという。このうち米AT&T Wireless社や英BT社,ブラジルBrasil Telecom社など15社が,Intel社のPRO/Wireless 5116を用いたトライアル・サービスを実施する意向を表明している。

 WiMAXを推進する業界団体のWiMAX Forumは,2005年第3四半期にも相互接続性試験の実施する予定。順調にいけばWiMAX準拠が認定された通信装置が,2005年第4四半期に登場する。Intel社は「早ければ2005年中にも,世界市場のどこかで商用サービスが始まる」(インテル セールス・マーケティング本部 プロダクト マーケティング マネージャー Wireless LAN製品&システムズ 梅野光氏)と見込む。

 ただし日本市場ではWiMAXの実用化へのスケジュールは明確になっていない。WiMAXが利用できる無線周波数が割り当てられていないためだ。総務省は現在,「ワイヤレスブロードバンド推進研究会」において新たな無線ブロードバンド・システムに向けた提案を募集中である(総務省のWWWページ)。WiMAXを推進する陣営はこの提案募集に対し,所望の周波数帯および周波数帯域幅などを提案しているもようだ。国内においても早期の事業化を訴えていく姿勢だ。なお諸外国では既にWiMAXの利用を想定した周波数帯の割り当て作業が始まっている。例えば米国では5.8GHz帯や2.5GHz帯,中国では3.5GHz帯の利用が想定されているという。

 韓国メーカーもWiMAXの開発を強化している。例えば韓国Samsung Electronics Co.,Ltd.は2005年4月にWiMAXのボード・メンバーとなり,標準化に積極的に関わっていく姿勢を見せている(Tech-On!の関連記事)。同社は移動体も含めた広域無線サービス技術を「WiBro」と称して開発を進めてきたが,これを携帯機器など移動体を含めた広域無線サービスを可能にするWiMAXの後継規格に反映させたい意向のようだ。

 Intel社が今回発表したPRO/Wireless 5116は,米IEEEの標準規格「IEEE802.16-2004」に準拠したもの。宅内用ゲートウエイ装置などへの通信を想定し,主な用途は固定通信である。移動体を含めた広域無線サービスを可能にする後継規格は米IEEEが標準化を進める「802.16e」に基づくもので,こちらは2005年中に仕様が固まる予定である。

 WiMAX対応をうたうベースバンド処理LSIは,富士通なども開発を進めている。Intel社はこうした競合メーカーに比べた優位点として,集積度が高い点を挙げた。EthernetのMAC回路やセキュリティ制御回路などを集積する。複数チップで構成する場合に比べて,低価格化や実装面積を削減しやすいという。

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