図1 IDF Japan基調講演での米Intel社 Senior Fellow and Director,Justin Rattner氏。
図1 IDF Japan基調講演での米Intel社 Senior Fellow and Director,Justin Rattner氏。
[画像のクリックで拡大表示]
図2 Siフォトニクスを今後10年の技術の3本柱に位置づける。
図2 Siフォトニクスを今後10年の技術の3本柱に位置づける。
[画像のクリックで拡大表示]
図3 Intel社が想定するSiフォトニクスの応用先
図3 Intel社が想定するSiフォトニクスの応用先
[画像のクリックで拡大表示]

 米Intel Corp. Senior Fellow and DirectorであるJustin Rattner氏は,Siベースの光エレクトロニクスである「Siフォトニクス」技術を同社の今後10年の新技術の中でも主要3本の指に入ると位置づけていると述べた(図1)。2005年4月7日~8日に東京・お台場で開催中のIDF Japanの基調講演の中で明らかにした。同氏は2005年3月に米国で開催したIDFでも同様な趣旨の基調講演をしている。

 Rattner氏は,基調講演で今後10年で重要となる技術を15ピックアップした(図2)。その中で特に重要となる技術として(1)(マルチコアなどの)並列処理,(2)Siフォトニクス,(3)仮想プラットフォーム——の3つを挙げた。Siフォトニクスは,光エレクトロニクスの素子をCMOS互換のSi技術で開発する分野である。

チップ間やチップとメモリとの通信を高速化

 Intel社は,Siフォトニクスを「チップ間シグナル問題」と同社が呼ぶ課題の画期的な解決策として位置づける。チップ間シグナル問題とは,積層したウエハー間,あるいは各ウエハーとメモリとの配線の帯域をどのように確保するかという点。「配線に光を使えば帯域は十分確保できることは分っている。しかし,これまではコストが高すぎた」(同社)。従来の通信用の光学素子は,InAsなど「III‐V族」と呼ぶ化合物を利用したものが多く,非常に高コストだったのである。同社は,長年手掛けてきたCMOS技術で光学素子をSiウエハー上に作ることができれば,低コストで広帯域のチップ間配線が実現可能になると見て,Siフォトニクスの研究開発を続けていた。

 同社によれば,導波路や受光素子,変調器に関しては高い性能を持つ素子をSi技術で開発済みだったという。基調講演でRattner氏は「これまで唯一,シリコン化が実現していなかった素子がある。それが発光素子だった。最近我々はこの素子開発で根本的なブレークスルーを実現した」と発言した。これはIntel社が2005年2月に発表したラマン効果を利用したSi基板上のレーザ素子のことを指したものだ(Tech-On!の関連記事)。「これまで化合物の光学素子が出来ても実用化は難しいという見方だったが,今回のラマン・レーザは違う。量産も難しくないだろう」(Intel社の技術者)と,ラマン・レーザの開発でSiフォトニクスの現実味が一気に増したと見る。

 同社は,Siフォトニクス技術を様々な用途に応用していく方針だという(図3)。具体的には,チップ間通信,バックプレーンの配線やディスプレイとの接続,データセンターでのサーバー間接続,化学分析,そして医療レーザなどである。